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水に立つ人

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  • サイズ B6判/ページ数 250p/高さ 20cm
  • 商品コード 9784163905280
  • NDC分類 913.6
  • Cコード C0093

出版社内容情報

周囲に心を開けない女性教諭と、カメラマンの青年。傷つけながら惹かれ合う二人。人の再生をモチーフに紡がれた鮮烈なデビュー作。彼の悲しみは彼のものなのだ。

でもよく似た悲しみを、私もまた知っている。



選考委員全員が◯を付けた、オール讀物新人賞受賞作を含む鮮烈なデビュー作。



この人は、ただひたむきに人間の再生を描こうとしている。

どの一編にも、心が救われる瞬間が、深く刻まれていた。

ーー白石一文



〈著者コメント〉

傷ついている人、立場の弱い人、大切なものを失った人。どこにでもいるけれども、悲しみを抱えているとは傍目に分からない人たち。そんな人々にスポットライトを当てて、彼らがそれぞれの救いをつかみとっていく道筋を、五つの物語の中に描き出しました。どの物語の最後にも、必ず、彼らなりの光が待っています。

なんだか疲れてしまって、昨日までカラーだった世界が、急に彩りを失ったように感じるとき。ひとりぼっちで、何もかもがモノクロの世界の中へ、迷い込んでしまったように感じるとき。どうかこの本を開いてみてください。読んでくださった方の視界にもう一度、豊かであたたかな色彩が戻ってくるように、そんな願いを込めて書き上げた作品達です。



〈著者プロフィール〉

香月夕花(かつき・ゆか)

1973年生まれ。大阪府出身。京都大学工学部卒。2013年「水に立つ人」で第93回オール讀物新人賞を受賞。

香月 夕花[カヅキ ユウカ]

内容説明

生い立ちに問題を抱え周囲に心を開けない女性小学校教諭と、無自覚なままに人が見抜かれたくないことを言葉で射抜いてしまうカメラマンの青年・葛城。人と交わることが苦手な二人は傷つきながらも惹かれ合うが、葛城は山に撮影に出たきり姿を消してしまい…(「水に立つ人」)。選考委員全員が○を付けた、第93回オール讀物新人賞受賞作を含む鮮烈なデビュー作。

著者等紹介

香月夕花[カツキユカ]
1973年生まれ。大阪府出身。京都大学工学部卒。2013年「水に立つ人」で第九十三回オール讀物新人賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

いつでも母さん

223
私が無くしたのはなんだったのだろう。ほとばしる激情も持て余す感情もささくれだった心は、日々の暮らしの中で諦観に達することもなくただ時間に追われて目先の雑事の波に呑まれ来たようだーこの短編5話から置き去りにしてきた感性を垣間見た気がした。『水』をテーマにしたのは流れ行き戻り来るのか、はたまたそこに漂う形なきものを詠うのかー優しさと哀しみと痛みと・・タイトル作も良いが『岸辺で私は歌を待つ』『水風船の壊れる朝に』が好きだ。2016年の発行だが、もっと多くの人に読んでもらいたい。静かに深く沁み込む読後感。2018/06/28

❁かな❁

197
心の奥底に悲しみ、喪失感を抱え誰にも言えずにいる。誰かに気づいてほしい、救ってほしい、そんな思いに苦しくなる。オール讀物新人賞受賞作の表題作を含む5編の短編集。表題作と「やわらかな足で人魚は」で特に涙。どの章も水がモチーフ。どこからともなく水の匂いが漂ってくる。静かで繊細で脆い感じ。癒されたい心の渇きに浸透していくよう。傷つき、大切な人を失った人達が再生に向かう瞬間を描かれている。文章が温かく穏やかで優しい。各章切ないけどほのかな光が見えるような終わり方で素敵。静かな感動を誘うデビュー作。次作にも期待。2018/05/18

nico🐬波待ち中

119
大切なものを失くした女性達の、再生までの過程を静かに語った5つの短編集。物語の中にひっそりと漂う寂しさや危うさに心が押し潰されそうになる。特に『やわらかな足で人魚は』と『彼女の海に沈む』は荒れ狂う波にのまれるように、いつまでも気持ちが落ち着かない。世間の波に溺れそうになり必死でもがく彼女達は、やがて自分の足で確実に立つことを悟る。ラストは僅かながらも希望が持てるもので、そこでようやく救われた。幼い頃に絵本で読んだ『人魚姫』のことは正直あまり好きではなかったけれど、「人魚姫」の最後の決意に初めて共感できた。2018/05/26

naoっぴ

101
悲しくて苦しくて世の中がモノクロにしか見えなかった毎日が、あるきっかけで鮮やかなカラーになるとき。閉じていた心の扉が次々と開くとき。道端に咲いていた花に初めて気づくとき。そんな奇跡のような瞬間が自分にもあったと思い出し共感しながら読んだ。傷ついた心のどん底の心境やそこに宿る攻撃性の描写には容赦がなく、読んでいて胸が抉られるよう。そして後に差す希望の光。これがデビュー作とは。中でも「やわらかな足で人魚は」と「水に立つ人」が好きだった。2018/05/28

ちゃちゃ

97
ひとつひとつの物語から、祈りの声が聞こえてくるようだ。鋭いナイフを思わせる作者の感性は、水というモチーフのもと、実に柔らかく繊細に心の機微を描きあげる。愛情に飢え、渇いた心が求める水。『やわらかな足で人魚は』で語られる人魚姫の切実な願い。人間に愛されて永遠の魂を手に入れたい。自分も当たり前に愛される人になりたい。悲痛な叫びは受け手を得て、いつしか傷ついた心に沁み込む水となり、確かな希望として生を潤してゆく。冒頭の情景描写も、それぞれの物語の気配を感じさせて秀逸。愛情への渇望。その重さが心に響く佳作だ。2018/04/29

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