出版社内容情報
主人公はどこか箍がはずれた性格の元職人の父親を憎み軽蔑する。父は惨めに死にゆく。だが、回想の中の父の姿には愛すべきところも。
父は惨めに死にゆく。息子はそれでも許そうとはしない
主人公はどこか箍がはずれた性格の元職人の父親を憎み軽蔑する。父は惨めに死にゆくのだった。その憎しみの元を回想の中に探っていくと、父の姿には愛すべきところもあった。人間の負の部分を徹底した筆致で描いて、複雑な感動を呼ぶ私小説の傑作。
内容説明
惨めに死にゆく父親を、息子は何ゆえ執拗に憎むのか。人間の心の根源に徹底して迫る、私小説の極北。名作『母子寮前』の作者が描き尽くす、人間・家族の赤裸な真実。
著者等紹介
小谷野敦[コヤノアツシ]
1962年、茨城県生まれ、埼玉県育ち。東京大学英文科卒。同大大学院比較文学比較文化専攻博士課程修了。学術博士。大阪大学言語文化部助教授、国際日本文化研究センター客員助教授などを経て、文筆業。著書に『聖母のいない国』(サントリー学芸賞受賞)など(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
そうたそ
38
★★★☆☆ 「ヌエ」と著者が呼ぶ父の姿が描かれる私小説。「母子寮前」とセットで読むと、世界が繋がる気がする。とにかくヌエ=父を忌み嫌う主人公であるのだが、過去を顧みれば愛すべき部分も多分に感じられた父親の姿があったように思う。傍から見ればそれほど嫌うほどの人物なのかなと思う部分もあるのだが、実際そうもいかないのが、家族という関係性なのだろう。父に対する憎しみがぶつけられているという内容の割には、作品全体の内容・世界観としてはしっとりとしていたのが印象的。最後の母親の一言が妙な読後感を残す。2015/11/17
Ayumi Katayama
20
前に『母子寮前』を読んでいたので、「ヌエ」が何を意味するのかは知っていた。著者の実父である。蔑称だ。その実父という人は、癌で入院している妻に向かって「死んじまえ!」などと罵倒するような人であり、そんな実父を著者は嫌っているのを通り越して憎んでさえいるかのようであったので、そこに主眼を据えたであろう本書は図書館から借りては来たもののなかなか開くことはできず、二週間を延長しもうあと一週間しかないという頃になってようやく手に取った。が、思った程には大変ではなかった。むしろ滑稽でさえあった。2019/01/23
mntmt
16
これは自伝なのかな。心の整理をつけるため、一気に書かれた印象を受けた。2015/07/02
まりこ
11
図書館より。自分の父親にヌエとあだ名をつけ、実家→父親の住む家をヌエズハウスと呼ぶ。ヌエの事が死ぬ程嫌いな息子。弱っていくヌエの事を考え夜中にゲラゲラ笑う。冷酷だと思う人は人間というものを知らないのだと言いきる。これが実話だから困ったもんだ。でも大嫌いなヌエの表情や姿勢がソックリなんですって?おめでとう。ざまーみろ。2015/06/28
toshi
9
著者自身のことを書いた私小説(?)。 ヌエというのは父親のことで、現在や比較的最近のことと過去のことが交互に書いてあるので、読みにくいことこの上ない。 内容も出来事がただ書いてあるだけで面白くともなんともない。 西村賢太の作品のように読んでいて不愉快になることがないのが救い。2015/06/07