出版社内容情報
都と陵はきょうだいとして育った。だが、今のふたりの生活のこの甘美さ!「ママ」は死に、人生の時間は過ぎるのであった。
過去と現在の間に立ち現れる存在
「都」と「陵」はきょうだいとして育った。だが、今のふたりが過ごす生活のこの甘美さ!「ママ」は死に、人生の時間は過ぎるのであった。
内容説明
都と陵はまたこの家で一緒に暮らし始めるのだった。人生の最も謎めいた部分に迫る長編小説。死が揺さぶる時間。
著者等紹介
川上弘美[カワカミヒロミ]
1958(昭和33)年、東京都生まれ。お茶の水女子大学理学部卒業。94年、「神様」で第1回パスカル短篇文学新人賞を受賞。96年、「蛇を踏む」で第115回芥川賞を受賞。99年、『神様』でBunkamuraドゥマゴ文学賞、紫式部文学賞、2000年、『溺レる』で伊藤整文学賞、女流文学賞、01年、『センセイの鞄』で谷崎潤一郎賞、07年、『真鶴』で芸術選奨文部科学大臣賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
1 ~ 2件/全2件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
345
川上弘美さんは様々な小説のスタイルを持った人だ。今回は実にシリアスなリアリズム小説。しかも、行き着くところを閉ざされた近親相姦をテーマに描く。謂わば自己完結するしかない、他者から見れば不毛の恋愛文学にあえて挑んだ。そこには他者の介入の余地がないだけに、読者からの共感も得にくいだろうと思われる。しかし、原点に立ち返って、愛するとは何だろうとの根源的な問いを突き詰めようとしたのが今回の試みだった。時間軸の錯綜は、迷いではない。都の陵への一途な想いの循環と変奏なのだ。水声は限りなく哀切で、モノトーンの美しさだ。2014/10/29
風眠
139
重く濁った水のような、けれど、切られるように冷たく澄み切った水が流れてゆくような物語。父と母だと思っていた二人の関係は、実は兄妹で、父親は別にいるらしいということ。当たり前と思っていたことが、当たり前ではなかった。そして都と陵、姉と弟が関係をもつ。常識的に考えると許されないこと。けれど許すとか許さないとか、何を基準に誰が決めるのだろう。内容的にはかなりな衝撃作だけれど、作家の冷静というよりは冷徹な文章によって、「清」と「濁」が絶妙なバランスで描かれ、「許されない愛」の甘美さが物語の中で美しく昇華していく。2014/12/06
nico🐬波待ち中
117
50代の姉弟、都と陵。互いが「もう一人の自分」のような存在の二人。それは好きとか恋とか簡単に言い表すことの出来ない感情。胸が締め付けられる想い。水のように形がはっきり定まらず、ふわりふわり静かに流されていく。互いに距離を持とうと離れた時期もあったけれど、やはり離れられない二人は家族とか恋人等の枠に囚われない生き方を選ぶ。例え他人に咎められようとも、隣で生きていきたい、ただその想いのみ。とても穏やかで、けれどとても情熱的で狂おしい物語だった。2018/06/20
kazi
111
川上弘美先生が私の中で静かな熱狂を引き起こしています。澄んだ言葉たち。夢と現実、過去と現在が入り混じる語りの流れ。長い詩を詠じているかのような、心地よいリズム。全てが素晴らしい。これは魅力的だった“ママ”という人物を中心に語られる家族の物語でもあり、語り手の“都”という女性の愛と性の物語でもあり。“普通ではない”恋愛を書いているのだが、決して突き放さないし、わざとらしく肯定もしない。この広い広い世界で普通なことなんて何もない。それぞれがそれぞれの個としてあればそれで良い。自然とそんなふうに感じられる。2024/03/25
モルク
92
都と陵は一才違いの姉弟。ママ亡きあと以前住んでいた家で一緒に暮らす。パパは本当の(遺伝子的な)父親ではなくママの兄、都と陵にとっては叔父であること、それをすんなりと受け入れる。過去と現在が入り混じり、これは夢か現実なのかも曖昧になる。都と陵の愛も、不思議とか、違和感、嫌悪感を持つものではなくすっと入ってくるのはなぜだろう。不思議と心地よい。まるで水の中に浮かんでいるような…これは川上弘美の文章力のせいなのか。とにかく、もっとひたっていたい。2026/05/07
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