出版社内容情報
妻子持ちとの恋愛の末、漁師町へ移住した紗枝。事実婚など理解されぬ古い町で「二号丸」が居場所を見つけるまでを描く表題作他四編。
〈驚愕しながら、あきれながら、時に笑いながら、何度でも思う。ここはどこ?〉
妻子持ちの音楽プロデューサー、長尾の愛人だった紗枝。会社の倒産ののち漁師への転身を決めた彼の郷里へ伴われ、移り住むことになったのだが、身内意識のつよい漁師町で「二号丸」と呼ばれていることを知ったのは、やって来て、たったの十日だった。「妻」から時折かかってくる長電話に、敵意にみちたまなざしを向ける海の女たち。潮の匂いと海上にたちこめる白い霧。いつまでも慣れることのできない生活でいちばんの喜びは、東京にいたころよりはるかに生き生きとしてみえる長尾の笑顔だったが、彼が漁師仲間の喜寿祝いで紗枝を紹介する、と急に言い出した――閉塞する状況を覆す、漁を生業とする男たちと女たちの日々の営みの力強さ、すこやかさ。圧倒的な生の力を内に秘めた「漁師の愛人」。
〈問題は、私たちが今、幸せであったらいけないと感じていることかもしれない〉
震災から一か月足らず。女三人でシェアハウスして暮らす毎日があの日から一変してしまった。藤子の恋人(カフェ経営者)は、炊き出しボランティアで各地をまわり、ほぼ音信不通。ヨッチは、彼氏がホテルから妻のもとに逃げ帰って以来、微妙な感じ。眞由に至っては、大地震の三日後にこの家を出て行ったきり、帰ってこない。雨もりの修理にたびたびきてくれる63歳の小西とのなにげない会話と、豚ひき肉の新メニュー作り、ビーズ細工のストラップ作りが、余震のさなかの藤子の毎日を支えていたのだが。2011年春の、東京のミクロな不幸と混乱を確かな筆致で描いた「あの日以後」。
その他に【プリン・シリーズ】三篇を所収。
内容説明
漁師になった長尾が属する海辺のコミュニティは、“愛人”を拒みつづける。採譜の仕事をしながら彼と暮らす紗江はそのままでかまわないと思っていたのだが―。“妻”と私と、ひとりの男の“回復”をめぐる物語。
著者等紹介
森絵都[モリエト]
1968年東京都生れ。早稲田大学卒業。1990年『リズム』で講談社児童文学新人賞を受賞しデビュー。同作品で椋鳩十児童文学賞を受賞。『宇宙のみなしご』で野間児童文芸新人賞、産経児童出版文化賞ニッポン放送賞を受賞。『アーモンド入りチョコレートのワルツ』で路傍の石文学賞を、『つきのふね』で野間児童文芸賞を、『カラフル』で産経児童出版文化賞を受賞。『DIVE!!』で小学館児童出版文化賞を受賞。2006年『風に舞いあがるビニールシート』で第一三五回直木賞を受賞。エッセイ、児童書、絵本など幅広く活躍する(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
おしゃべりメガネ
風眠
いつでも母さん
ハミング♪♪@LIVE ON LIVE
マッツ