出版社内容情報
紫に染められた祖母の髪、真横に疾る白い雪、黄色に咲き乱れる連翹。九つの色が読む者の心を染める。花村萬月が贈る短編小説の極み。
紫、赤、黄、白、黒、青、緑、茶、そして灰――。九つの色を九つの物語のタイトルにした短篇集。物語の中で滲み、流れ、炸裂し、そしてまた収斂してゆくそれぞれの「色」。染められた祖母の髪、流れる血液、咲き乱れる連翹、爪にたまる垢、真横に疾る雪、合法ハーブ、そして音楽が醸し出す「色」とは――。
作者に英才教育を施し、自らも創作者たらんとした父親を描いた「黄」、母親との間の深いコンプレックスに敢えて分け入り、自らの深奥ぎりぎりまで潜って描いた「茶」など、短編小説の極みを集めた作品集。
内容説明
凄絶な生と死を彩る九つの「色」の物語。母の死を描いて大きな話題となった「茶」を収録、待望の連作短編集。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
幹事検定1級
24
各色に合わせ自らの体験談をからませながら、若干アングラな世界を描きます。どこまでがノンフィクションでどこからがフィクションなのかは難しいところがありました。(図書館本)2018/03/09
tom
12
お久しぶりの花村萬月さん。図書館で手に取り、開いてみると、京都の化粧地蔵の話が出て来た。化粧地蔵は、青森でも見たし、最近は兵庫県の出石でも見てきた。写真の被写体として、注目してるのです。ということで、借りてきた。化粧地蔵が出て来る章は、こんな内容。京都に住み始めた。祭りがある。地蔵に化粧をして奉納する。夜中、書き物をしていて思い付き、奉納した地蔵を盗みに行く。これが昂じて、夜な夜な地蔵盗みを始める。やがて、書斎の床には、化粧地蔵が林立する状態・・・。ウソ話でしょうけど、妙にリアル。2018/01/06
Kohn
11
薬物関係の話。怖いもの見たさに、つい読んでしまう。最初は短編集のようだが、途中からエッセイのように変わる。色をテーマに綴られている。初めて読んだ作家。通常は分からない、理解に苦しむ薬物に落ち込む心理描写が光る。2013/10/13
ophiuchi
9
色を表す一文字を題名とした短編を収録しているが、それぞれの話はかなりばらついていて、ちょっと肩透かしを食った感じがした。ちょっと意外だったが私小説的なものの方が面白かった。2014/11/07
ウメ
7
小説は虚構をつくりあげる。嘘をつき続ける。事実をまぶすことで私小説なのかと匂わせるも、自ら指を切り落とすような目の覚める展開に持ち込むのはさすが。私には本質を理解できるほどの力量はないが、やはり花村氏が好きだ。2020/08/09