出版社内容情報
徳川四天王・井伊直政の養母、直虎。彼女は先を視る不思議な力を持っていた。戦国の世に領主となった女の熾烈な一生を描いた渾身作
井伊直政は家康にむかって話を続ける。それを訊く家康の相づちは実に楽しげだ。
「十五の年、養母は、この男だけは絶対にいけないと強情なまでに言いはり、ついには髪を下ろしてしまいました。当時、今川義元公の庇護の下、繁栄を極めた駿府より、ありとあらゆる贅沢品を用意した縁談相手を前に、養母は一言、こう言い放ったそうです」
──紅はいらぬ。剣をもて。
戦国の世、女地頭と呼ばれた徳川四天王・井伊直政の養母、井伊直虎。彼女の熾烈な一生を描いた、『トッカン』の著者がおくる渾身の歴史エンターテインメント!
内容説明
戦国の世、女地頭と呼ばれた徳川四天王・井伊直政の養母、井伊直虎。彼女の熾烈な一生を描く歴史エンターテインメント。
著者等紹介
高殿円[タカドノマドカ]
1976年兵庫県生まれ。2000年『マグダミリア三つの星』で第四回角川学園小説大賞奨励賞を受賞しデビュー。ファンタジーを中心としたライトノベルで活躍。10年、初の単行本である『トッカン 特別国税徴収官』は人気シリーズとなり、12年にはテレビドラマ化もされ大きな話題を呼んでいる(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
雪風のねこ@(=´ω`=)
130
泣いた。伊勢神宮の巫女の血を引く側女に紅を差された時も。元許嫁の首に紅を差した時も。無念であったろうと思うし、苦難という苦難を重ねたというのに紅のひと差しだけとは。けれども哀れだと思わない。自身が現世で与えられた使命を全うしたのだから。幸せだったと思う。哀しむ事すら出来ぬ間に蹂躙され無残に死していく時代であったのだから。人は其々役目を持って生まれてくる。おのこは剣を持ち、人を斬る為に。おなごは紅を差し、縁を結ぶ為に。其々の戦場に赴いて征くのだ。直親の死も、政次の死ですら、子孫から見れば(続く2016/12/06
七色一味
94
読破。表紙からしてラノベ系かと思いながら読んでみましたが──、意外や意外(といっては失礼か)、史実に基づき、しっかりとした時代考証により脇を固められた作品でした。男社会だったと思っていた戦国時代、しかし、男社会を支えていたのは、「政略」の名のもとに各地に出された女達。香の目に見えていたのは、家の再生へのシナリオ。2013/10/01
R
89
井伊直虎のことを描いた歴史小説でした。ややファンタジー色を帯びた内容で、何かが見える力を持った娘が井伊の領地を守り、やがてその力の根源に気付いていくというお話でありまして、語り部は息子の直政でそのお家の悲惨と呼べる浮き沈みを描いていました。大名に翻弄される小領主の悲哀とともに、戦国を生きるということについて、良いとも悪いともいわない生き様を幾人かの武将を通して見せてくれました。不幸を察知しても回避できないというのは地獄だなと思わされる。2017/10/23
ちはや@灯れ松明の火
87
削ぎ落した黒髪に未練はない、生涯飾らぬと決めた覚悟に悔いもない。名にし負う常葉の橘が千里を視通す眼を与えた。血脈の井戸が涸れ果つることなきように、少女は尼となり虎となる。黒く蠢く蝗の群れ、悠然と漂う白き鯉、眸は怪異を映せども、掌は生命を救えぬままに、累々と重なりゆく屍、施す紅に滲む無念。牙を剥くのは奪う為ではなく、喰らい合うのも憎い所為ではない。互いに、只生きるが為に、生きたいと唯思うが故に。血を流すべく剣を構えることはなく、血を繋ぐべく紅で彩ることもない。受け継がれし血の鎖を護り抜く、唯その為だけに。 2013/04/07
かいと
83
2017年の大河ドラマの主人公の井伊直虎の話。井伊の本は読んだことがなかったので読めてよかったです。井伊直虎がいなかったら幕末のころに井伊はいなかったかもしれないと思いました。2017/02/03