出版社内容情報
父は失踪、鬼ハハと暮すノブオは筋金入りの野球少年。友との別れも失恋も出生の秘密も、長嶋茂雄に救われ、乗り越えるのだ!
内容説明
小学五年生のノブオは、誰もが一目おく野球少年。詩人である父は行方不明、母は働くことにも子どもにも無関心という悲惨な状況のなか、ひたすら長嶋に憧れ野球に打ち込みます。友との別れや理不尽に負った怪我、出生の秘密やほろ苦い初恋も、「長嶋」を心の支えに、ぜんぶぜんぶ乗り切るのです。
著者等紹介
ねじめ正一[ネジメショウイチ]
詩人・小説家。1948年東京都生まれ。青山学院大学中退。阿佐谷で民芸店経営のかたわら詩を書く。81年、処女詩集『ふ』でH氏賞を受賞。89年、自らの少年期を題材にした小説『高円寺純情商店街』で第一〇一回直木賞を受賞。2008年、『荒地の恋』で第三回中央公論文芸賞、09年、『商人』で第三回舟橋聖一文学賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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オーウェン
55
巨人軍選手の長嶋茂雄を憧れにしている小5のノブオ。 突然いなくなった父に、ノブオに無関心な母。 心を分かち合った親友や、初恋の人。 人生の中で挫けたときは長嶋を心の支えにして乗り切っていく。 著者のねじめさんの少年時代と被るのだろう。 長嶋茂雄になりきっていく過程なので、それと違うことには反発を覚えていくノブオ。 描いていくエピソードは楽しげなものもあれば、なんとも身につままされるものまで。 少年の成長と切っても切り離せない青春の1ページが切り取られている。2021/01/13
miu
23
『僕は長嶋です。』大好きな父は行方不明。大嫌いな母はネグレクト。ノブオの心の支えは偉大なる巨人の長嶋だった。小学五年生の子供と母との関係は、あまりにも酷い。でもノブオの心の中に長嶋がいる限り、道を踏み外しそうになってもちゃんと戻ってくるんだ。両親への想い、友情、小さな恋心、温かい周りの人。泣けてくる!表紙のノブオの背中は寂しげだけど、歩く先には長嶋がいる。ノブオは間違っていない。哀しさと温かさを併せ持つステキな作品。2016/01/03
ち~
20
長嶋茂雄と野球が何よりも大好きな、小学5年のノブオを語り手とし、作文調で書かれています。冒頭から、父親が失踪。母親はノブオに全くの無関心で、お金に大変な執着があり、それがノブオの心を傷つける。そして相次ぐケガや野球友達とのショッキングな別れ。不幸が降りかかる度に、「もし長嶋なら…」と長嶋を心の支えに乗り越えるノブオ。それでも、どうしようもなく捻くれてしまう事もありながらも、どこまでも健気なノブオに感動しました!とても良かったです。2015/07/15
あやっぴ
11
主人公のノブオは父が家を出てしまってから母親との2人暮らしだが、その母親は育児放棄。ノブオにとってはあまりにも酷く辛い家庭でありながら、それでも大好きな巨人の長嶋の存在により、たくましく野球に打ち込むことができた。野球が上手く長嶋のことだったら誰よりも知ってる少年…それが近所でも評判になっていた。毎日の夜ご飯を作って届けにきてくれるおばさん、新しい野球チームの監督の赤井先生の献身的な愛情には涙が出そうになりました。すごくいいお話でした。2016/03/14
葉芹
8
ねじめ作品二冊目。どういう作品が他には待っているんだろうとワクワクしてきました。久しぶりにこの人を知りたいつまりは他のものも読みたいということなんですが。主人公が愛おしくて、ネグレクトの母親に一緒に怒っていました。人情小説とだけでは言えないものがあります。長嶋がもしいなかったらこの少年はどうなっていたんだろうなどと考えました。2014/09/14