出版社内容情報
植木職人の殺害と大地震直後に続く付け火。朝顔栽培が生きがいの興三郎は、無関係に見える2つの事件の裏に潜む真実を暴けるのか。
内容説明
殺された植木職人、江戸を襲った大地震、相次ぐ付け火…。いくつもの事件にひそむ謎。“朝顔同心”は真相にたどりつけるのか!?―。
著者等紹介
梶よう子[カジヨウコ]
東京都生まれ。2005年「い草の花」で九州さが大衆文学賞大賞受賞。08年、『一朝の夢』で松本清張賞を受賞し、同作で単行本デビューする(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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万葉語り
52
東野圭吾の『夢幻花』と素材は同じ。ちょうど東日本大震災と同じころに連載されていた、安政の大地震を題材にした作品。いつの世でも災害の後で苦しむのは庶民で、苦しみの中でも暴利をむさぼろうとする悪徳商人がいて、清廉な役人は役に立たず、何粒かの朝顔の種に明日の希望を託す。命のかけ方は人それぞれでいいけど、そのかけ時は間違っちゃいけないなと思った。良書ですおススメです。2018-992018/05/15
エンリケ
41
朝顔マニアの同心興三郎が主人公。「一朝の夢」より前のお話。今回もとある殺人事件が大事件へと展開する。自分の夢を揶揄されて凹む興三郎。朝顔が好きなだけでは誰の役にもたたないのか。そして序盤で江戸を襲う大地震。被災者達への無力感も彼の落ち込みを助長する。でも彼の優しさはきっと皆に伝わっている。今回も終盤の興三郎は凛々しい。凡庸なりに悩み苦しみ成長していく。彼に魅力を感じるのはそんなところだろう。被災者達にとった行動、最後に見せた覚悟は天晴れ。江戸中に朝顔が咲き誇る光景を想像してしまった。2018/03/28
Norico
36
読み始めて、「一朝の夢」の改訂版かしら?とおもってしまったが、あの話の前日譚というか、興三郎の若かりし日の話。なんだかんだ、巻き込まれ体質ですね、朝顔同心。優しいから、見逃せないのかな。お助け小屋が無くなる日、みんなで朝顔を咲かそうと呼びかける興三郎はかっこよかった!「少しでも先を考えることが希望になります」2015/07/12
ゆみねこ
32
朝顔同心中根興三郎の物語。兄嫁になるはずだった志保さんへの淡い想いや、真っ正直な興三郎が良い。黄色い朝顔、青いバラと同じように夢の花なんでしょうね。震災前後に新聞連載されていたとのこと、当時も今も災害で泣くのは貧しい庶民であると実感しました。2013/07/20
浅葱@
29
前半はあれこれの事件や過去がバラバラで興三郎ののんびりしたテンポ。後半、兄嫁だった志保、地震のための避難所の御救い小屋、鯰の瓦版、そして吉蔵の事件で大きく動き出す。裏がつながっていくスピード感だけではなく、興三郎らしい思いと変わり方に感動。朝顔好きだけでは駄目だけれど、朝顔が好きでここまできた興三郎だからこそを強く感じた。事件はとんでもなく暗いものを孕んでいたけれど、きちっと後始末まで辿り着けて良かった。朝顔の素晴らしさが系譜や蘊蓄よりも興三郎の生き方を通して伝わり、黄花朝顔が近くの夢に思えた。→2013/07/05