内容説明
戦後16代目の検事総長・伊藤栄樹がこう宣言した1986年、世界は音をたてて変わりつつあった。日米構造協議などにかかわる中で、アメリカから始まったグローバル化の波をきっさきでとらえた三人の検事たちは、やがて、「巨悪」の定義を変える必要があり、それにしたがって検察・法務組織も変わる必要があると考えるようになる。本書は、伊藤が検察トップだった時代に中堅の法務官僚だった三人の検事が、検察と司法システムを「変えよう」と志し、「失われた10年」の90年代を経て権力を掌握し、激動の2000年代に、それを実現していった過程を描く。
目次
第1部 グローバル化の波を(公取委員長の供述;アメリカの圧力;取引の裏側)
第2部 標的は大蔵省(大蔵省キャリアに手をかけられず;国税庁を敵にまわすのか;杯をことわらない;ついに聖域へ;石川達紘を「整理」する)
第3部 市場か政治家か(党費たてかえを追う;自民党の魔法の箱;検事総長は市場にこだわる;日歯連事件捜査異聞;政界捜査は司法制度改革と取引されたか;特捜部長の蹉跌)
第4部 司法取引(「市場検察」宣言;仲間を売る;劇薬の生まれるまで;切れる刀「司法取引」;市場の番人;市場からの不信;復讐する「改革」)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ひまの
1
評価3。2008年の本なので情報が古い。90年代から2008年までの検察の流れがよく取材されており手に取るようにわかる。そしてたぶんだいぶ的確な流れ。話としては流れが淡々と書かれてるので面白みがない。2022/03/12
挙党協
0
取調を見事にかわす泉井純一がカッコいい。それにしても検察が「正義」を問う世の中など真っ平だ。永田町を常に横目にしたオールド検察は偉かった。2017/03/27
こたちゅう
0
最近の特捜部の事件を見ると隔世の感がある。経済のグローバルに対応するため検察を変えたが、現場派と赤レンガ派の確執が続く中、政治家汚職→経済事件の次に来るターゲットがなく、昨今の無理な操作になってしまったのか。不祥事の影響で捜査の可視化は避けられないと言われているが、捜査力の低下を避けるため更なる司法取引を導入するのか。その議論がなければ、治安の悪化につながってしまう。長くて読むのが大変だが、膨大な事実を積み上げた、良著だと思う。2010/12/20
たー
0
特捜が本当に社会のためになっているのかどうか考えさせられる。もう少し簡潔に書いてくれたら良かった。2008/08/15