出版社内容情報
日本近現代史の最大の役者は天皇であり、その中心舞台は東大だった。明治・大正・昭和を、「天皇」と「東大」という画期的な視点で見ることによって、歴史がまったく違った姿を現す。
万巻の資料を歩猟し歴史を発掘した、著者畢生の大作、ついに刊行!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
遥かなる想い
175
立花隆が描く日本近代史。 「東大」を視点に、明治以降の 日本の思想形成を丹念に 描く。日本史の教科書では わからなかった事件背景が 記載されていて面白い。 それにしても、著者の膨大な 知識はどこからくるのだろう。 知的好奇心という言葉では 片付けられない畏敬の念を 覚える。2014/07/05
井上裕紀男
26
天皇と東大を軸に見ることで、明治以後いかにして日本人の思想が変質したのかを解き明かす試みが大変興味深い。天皇制の捉え方や国の在り方が教授間でもまるで異なり、今と違って強い権勢を誇った教授の言動・行動も強烈。 今と大して変わらぬ国と国立大学の関係性や官僚組織の構造は明治時代に築かれ、お雇い外国人教授によって設計された話を見るに、有用人材を幕末に抹殺し過ぎたことがより物悲しく感じます。 戦争を鼓舞する教授と国粋主義に向かう昭和初期のクーデターや事件にも多く関わった帝大生。現代人真っ青の天皇崇拝が恐ろしい2021/08/08
Tomoichi
25
1998年2月から2005年8月にかけて文藝春秋に連載された「私の東大論」をまとめた本なので、当時毎月読んでいたのだが、20年も経てば憶えてないので、単行本をネットで探して購入。買って正解で初めて読んだ気持ちで読み進める。近現代史を天皇と東大という眼で追っていくのだが、これが面白い。明治から敗戦までの思想的展開を理解するのは最適です。また改めて立花隆の文章の読みやすさにも感心しました。下巻に続く。2025/03/09
てつ
23
文庫にして2冊分。さすがに読みごたえがあります。下巻へ2023/06/04
おさむ
22
上巻だけで782ページ。文藝春秋に70回、7年間にわたり連載した「私の東大論」をまとめたもの。専門的で蘊蓄と登場人物が多すぎて、現代史の勉強をしているかのよう。すぐに斜め読み。著者の主張は、大日本帝国と現代日本の間は無数の糸でつながっていて、相当部分が再吸収されて再び構成成分となっている、という点だ。令和のいま、東大から官僚になる人は減っているという。ようやく国家主義的な軛から逃れつつあるということだろうか。大学の独法化を、明治以来の大学人達が悲願としてきたチャンスと捉えるポジティブな見方にも通じる。2025/06/20