内容説明
福沢諭吉がミイラになった!という驚くべき事実から、抱腹絶倒「野球いろは歌留多」まで―頭を刺激し、心を豊かにする名エッセイ。
目次
牛肉と自由
スターとは何か
自転車屋の兄弟の伝記作者
吉田兼好論
生のものと火にかけたもの
ミイラの研究
二つの業界
ある婦人科医の考古学的意見
君の瞳に乾杯
風評、デマ、流言
贋作の動機を論ず
舟歌考
批評家としての勝海舟
『ギネス・ブック』の半世紀
シャーロック・ホームズの家系
野球いろは歌留多
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
紅はこべ
89
興味ある事柄について、主に他者の著作の引用で語る形式の本。ライト兄弟とスミソニアンの確執の項が面白かった。ライト兄弟の生涯については、子供の頃学研の伝記漫画で読んだ知識しかなかったので。彼らが最も尊敬していたのはリリエンタールで、ラングリー博士とやらは眼中になかったんだろうな。贋作についての項の、“そもそも小説家の仕事は普通の意味の真実の探求ではない。ウソをついて人を楽しませ、いはゆる真実とは違ふ別の真実を差出すことである”というのは、小説家としての丸谷氏の決意表明だね。2017/04/15
あきあかね
21
本書の「吉田兼好論」の中で、『徒然草』のような、呑気な話がたくさん入っている随筆集が大事な古典として学校で教えられる日本文化の特性が語られていたのが印象的だった。確かに、世界最古の随筆文学とも言われる『枕草子』を擁する日本には、古今を通じて随筆文化が底流にあるのかもしれない。モンテーニュの『エセー』が思想的で難解なのに対し、日本の随筆にはしなやかな軽みがあるように思える。本書をはじめ数多く著された丸谷才一さんのエッセイは、タイトルもテーマも軽妙洒脱で、人生の大問題など重い話題は決して扱わない。⇒2024/08/11