内容説明
神戸児童連続殺傷事件から七年、少年Aがついに仮退院した。医療少年院で行われた極秘の贖罪教育・矯正教育を初めて明かす衝撃のリポート!東京少年院の単独室に取り付けられたカメラで、Aの生活は二十四時間監視されていた。壁にぐったり寄りかかっている丸坊主のAは、まるで萎びた野菜のようだった。少年に生きるエネルギーを取り戻させるには、赤ん坊から育て直すプロセスが必要だ。「赤ん坊包み込み作戦」がスタートした―。
目次
序章 入院
第1章 事件
第2章 審判
第3章 精神寮
第4章 生い立ち
第5章 疑似家族
第6章 贖罪
第7章 退院
終章 神戸市須磨区
著者等紹介
草薙厚子[クサナギアツコ]
法務省東京少年鑑別所元法務教官。退官後、テレビ局アナウンサーなどを経て、ブルームバーグL.P.テレビ部門アンカー、ニュースデスクを担当。独立して、ジャーナリストに
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感想・レビュー
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よむよむ
63
先月、中山七里さんの「贖罪の奏鳴曲」を読みました。主人公の御子柴弁護士の過去に衝撃を受け、巻末に載っていた参考文献の本書を手に取りました。当時その残虐さと加害者の14才という年齢に驚愕した覚えのある事件。前代未聞の事件の加害者の少年の矯正教育は国家プロジェクトとして、特別扱いとなり、関わったスタッフはその処遇に協議に協議を重ねている。世間からのバッシングに耐え、複雑な気持ちを封じ、ひたすら少年の教育に取組むスタッフには頭が下がります。少年が御子柴のように贖罪の日々を送っていることを祈りたい。2017/02/03
mazda
41
なぜ少年Aはこうなってしまったのか、ということに興味があったので、両親の手記と併せて読んだ。母親との関係がどうのとか、躾が厳しくてどうのとかあるけど、この程度の教育的躾で子供がこうなってしまうのなら、ほとんどの子供が暴力的になっていてもおかしくないと思う。矯正教育については、総力戦で挑んだ甲斐があったのか、少年は贖罪の気持ちを持ち真摯に反省しているということなので、それは多少の救いだと思う。正直、なぜという気持ちに対して、明確な答えはなかった、というのが結論かな…。2013/11/12
さゆ
29
読んでいると同じ時期のこと、同じ表現が繰り返し出ている箇所が少なくとも複数はあった。あくまでも彼女が取材した範囲の僅かな情報を憶測やらなんやらで膨らませて書いたものである感は否めない。著者の経歴を見ると、ものすごくご立派なのだけれど、こんな程度の本しか書けないのかな。淳君のお父さんだって、「マスコミだから」取材を拒否したわけではないのだろうなと思った。一言で表すなら信用できない本だった。2012/12/13
ゲオルギオ・ハーン
25
神戸連続児童殺傷事件の犯人少年Aの生い立ちから少年院での矯正の取組、それにより徐々に思いやりなどの感情を取り戻していく過程を書いた一冊。生い立ち自体は特殊ではないが、彼の性格的にしっかり者の母親との相性が悪く、劣等感が積もっていき、愛情に飢えた心理状態になった。警察や少年院の分析は鋭く、「性的な感情と攻撃性が未分化」であったことが心理的原因としてまとめている。具体的には第二反抗期と祖母の死、愛犬の死が重なり、死に対する興味、攻撃性、性への考えが混ざってしまった。2023/07/13
akane_beach
18
1997年に起きた神戸の事件の加害者の少年院でのルポ。仮退院した2004年の刊行。現在はその頃から15年経過し、ネットなどでは本人の写真が出ていたりする。多くの専門家の手を借り矯正教育を受け、退院させた当時は誰もが不安だったことだろう。再犯は無さそうだが、本当のことはわからないが、この少年Aは根本的に自己顕示欲が強いように思える。母親が悪いという意見も多いようだが、生育歴が悪いからといって全ての子供が非行に走るわけではない。同じ劣悪な環境でも歪む人間とそうでない人間、その違いは何なのかと考えてしまう。2019/10/09