出版社内容情報
キリコ、クレー、ゴッホ、蕪村、木米、玉堂、王原祁……。二十の名画に彩られた二十の短編が、読者を二十の神秘の世界へ案内する
内容説明
キリコ、クレー、ゴッホ。蕪村、木米、王源祁―。20の名画に彩られた20の短篇が、読者をおのずから神秘の世界へ誘う…。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
コットン
68
『スミヤキストQの冒険』を読んだときは難しいと思ったが、これは一つの有名絵画に一つの物語で20編の連作短編集で軽くふわっと幻想的なのがいい。2023/03/26
たーぼー
55
『老人と海』の主人公は疲弊した体のままライオンの夢をみた。しかし、例えばライオンに生きたまま食される夢をみることを願う少女がいたら、もっと魅力的だと思う。例えば『廃墟』を好むマニアはいるが、『人の死体でできた廃墟』にエクスタシーを感じる少女がいたら、これも魅力的だと思う。誰しも残酷な空想の海の中へ沈んでゆく己の姿を眺めながら、愉しまずにはいられない欲求が何処かにあるはず。本書に収められた20枚の色鮮やかな絵画をみるうちに、そんな赤裸々な意識の告白を余儀なくされるよう。精神作用を深く、鋭く抉られてしまった。2017/04/04
いちろく
43
紹介していただいた本。20枚の絵画が関連する20の連作短編集。主人公の慧君が主催のネットワークにログインしてくる女性達との物語。性欲を持て余した10代の少年の妄想を描写したような展開は魅惑的な所もあるけれど、何処か達観していて嫌悪感は抱かず、読んでいて不思議だった。キリコ、ポナール、ゴッホ等の絵画や、源氏物語の影響も色濃く受けている事は解ったのですが、それらの作品に詳しくない私には世界観の理解までには至らず、文章を楽しんで終わってしまった点は残念。 2017/07/19
るすみら
20
絵画の中の幻想世界と現実を行ったり来たり。豊かなイメージの中に出かけて行く楽しさを、たっぷりと味わった。一枚の絵画に一つの短編が寄り添い、合計二十の物語を収録。絵の選ばれ方に意外性があり、ページをめくると思いもかけない世界に連れて行かれる。物語は「よもつひらさか往還」などの登場人物、慧くんを軸にすすみ、そして終わる。もちろん、この本だけを読んでも十分に楽しめる。2009/06/25
Roy
18
★★★★+ 良かった。古今東西の有名絵画と幻想文学の融合。「化物山水図」で淫夢という言葉が出てきたが、まさしくこの本全体が淫夢の世界。魅惑的で淫らな幻想にうっとりさせられる。「サントロペ湾」「選ばれた場所」「眠れるボヘミア女」「町はあけぼの」「仮面たちに囲まれた自画像」「赤いアトリエ」が好き。2009/02/07