出版社内容情報
前著『昭和精神史』を昭和二十一年八月で閉じた著者が描く昭和の終焉。三島由紀夫の死に続き昭和天皇の崩御で巻を閉じる鎮魂の大冊
内容説明
昭和二十年夏、戦争は終らなかった。東京裁判、三島事件、昭和天皇崩御―前作『昭和精神史』から八年。昭和を生きた日本人の心の歴史はここに完結する。「昭和」に捧げる鎮魂の大冊。
目次
占領下二年目
市ケ谷台の晩春初夏
憲法とかなづかひ
戦後文学と敗戦文学
東条英機と広田弘毅
占領後半期の精神状況
コミンフォルム・日本共産党・朝鮮戦争
占領終る
「近代の超克」論
戦後と三島由紀夫
60年反安保闘争
高度経済成長下の文学
記臆の復活
三島由紀夫の死
昭和天皇
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
風に吹かれて
21
前半のメインは東京裁判、後半のメインは三島由紀夫。 まず東條英機と廣田弘毅。戦争の責任を天皇に及ぼさず一身に背負った東條英機。それはGHQ占領施策に添うものであったが東條は外国人記者に対して「阿片戦争までさかのぼって調査されたら事件の原因結果がよく判ると思ふ。」(p171)と語った。裁判でも一切語らなかった廣田。東京裁判は、戦勝国の裁判であると同時に、日本はそれまでの一切に区切りをつけ顧みなくする契機としたのかも知れないとも思う。 →2022/04/05
ゆーいちろー
2
本書によって、保守系論客にとっては自明と思われる歴史的事実を確認する。GHQの高官は白洲次郎をして「従順ならざる唯一の日本人」と言ったというが、それは白洲個人への賛辞ではあっても、その他のすべての日本人に対する侮蔑ではなかったか?やりきれないのは周到にして、計画的な占領政策を可能ならしめたのは、明らかに日本人であったということである。「神道指令」や「プレス・コード」が、現在も有効である(としか思えない)のも悲しい。「悲劇」や「同朋意識」が共有できない「日本」。開化期からの課題は今なお生きている。2012/09/12
i-miya
1
第1章 占領二年目 一 荘子 "天籟"司馬遼太郎のはがき深切な反応伊東静雄天声人語 S22 新年号 太宰治『トカトントン』平凡な郵便局員 その一年半後入水 二 米国政府が意識している軍事占領の考え方は従来の国際法の慣例を意識しつつそれを超えようとしている マッカーサーはJCS(統合参謀本部)とSWNCC(国務、陸軍、海軍三省調整委員会)の指令によって動いていた事実 三 「太平洋戦争史」江藤淳『閉ざされた言語空間』で暴露 ウォー・ギルト・インフォメーション・プログラム2009/09/02
渓流
0
日本人の精神の形成変遷を分析するのかと思い手に取ったが、小説を主対象としてた筆者の想念の発露といった趣の本だった。小説から離れた天皇に関する回想が一番面白かった。文体から察するに元々保守的なる人物のようで、学術書ならぬ批評家の著作、学術書を期待して手に取ったので、少々場違いの読書になった。 2020/08/17