出版社内容情報
三歳時の事故で聴覚障害者となりながら、フランスでも高い評価を受ける作品を残した福岡の素人写真家の一生。未公開写真多数収録
内容説明
耳と言葉の障害を才能にまで昇華させプロを超えたアマチュア写真家、井上孝治。3歳のとき自宅の階段から落ちて、聴覚と言葉を失いながら、ハンディキャップを乗り越え、フランスの「アルル国際写真フェスティバル」に招待され「アルル名誉市民章」を得るまでの写真家となった。同時に、ろうあ運動にも心血を注ぎ、全国のろうあ写真家を一つにまとめ「全日本ろうあ写真連盟」を創立した。生きることに誇りと希望を持ち続けた障害者の一生を克明に浮かび上がらせる渾身のノンフィクション。
目次
序章 蘇った写真
第1章 四冊の古いアルバム
第2章 写真との出会い
第3章 井上カメラ店開業
第4章 「決定的瞬間」を撮る
第5章 米軍基地の友人
第6章 返還前の沖縄への旅
第7章 ろうあ運動のリーダーとして
第8章 全国のろうあ写真家を一つに
第9章 『想い出の街』
第10章 三十二年目の沖縄再訪
第11章 アルル国際写真フェスティバル
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
さすらいのアリクイ
12
「想い出の街」などの写真集を出しているアマチュア写真家、井上孝治さんの写真と足跡を追ったノンフィクション。「想い出の街」という昭和30年前後の福岡の街中や人を撮った、素敵な写真集を以前観たことがあるのですが、その写真集に載っている写真を井上さんが撮るまでの道程も、そして時代が流れて百貨店のキャンペーンでその時代の写真が採用され、その後写真集が出るまでの過程も緻密に書かれていて、かなり読みごたえがあります。この本にも井上さんの写真は載っていますが、やはり「想い出の街」を観てから読むのを、おすすめします。2015/08/31
ふゆ
3
木村伊兵衛の文庫解説を川本三郎が書いているのを見かけて、久しぶりに手に取った一冊。思い入れがありすぎて大変!耳が聞こえないというハンディキャップを逆に利用する天才写真家のノンフィクションは今年没後10年を迎える黒岩比佐子のデビュー作です。もーしょうがないと周りが受け入れてしまう純粋さと、認められたい野心が井上孝治の魅力でした。他に何も聞こえず、惑わされず、一途にただ写真と人を愛した人を知れた私の喜び。岩田屋ありがとう。2023/02/26
貧家ピー
3
1919年福岡県出身。3歳の時に事故で聴力を失う。 戦前より写真を取り始め、在日米軍基地勤務、井上写真店経営、聴覚障害者写真クラブを主催など、生涯を追った一冊。福岡の市井の生活を撮影した「想い出の街」の写真も掲載されているが、丸一冊見てみたい。2017/06/18
anxi
0
借り物2016/06/14
たかっち
0
井上氏の写真に力があって飽きない。2010/06/15