出版社内容情報
若くして鮮烈な文壇デビューを果たしたカポーティ、その晩年は余りに長く無惨だった。名声と悪名を同時に手に入れた男の傑作伝記
内容説明
あまりにも早く掌中にした栄光とその後の苦悩、肉親・恋人に向けられた狂おしいほどの愛と憎悪、作家として一人の男としてあくまでも率直に生き抜いたトルーマン・カポーティ初の本格的伝記。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
harass
75
長年かけてカポーティ自身にインタビューをしたり発言などを裏とりして書いた二段組666ページの評伝。奔放で才気煥発でその場を楽しくさせる天才は社交界で引っ張りだこで、甲高い声と女性的な仕草と派手な服装はどこに行っても目立った。多数の上流階級の女性たちの心から友人になったが、ゴシップ好きの彼は人の秘密を平気で喋るので、嫌うものもいた。「冷血」は成功をおさめたが、賞はまったく取れず、トラブル続きと酒と薬物と愛人との愛憎。悲惨な子供時代から栄光と衰退。カポーティも凄いがここまで書いたことが凄い。名著。2018/04/22
マエダ
38
著者クラークの感情を交えない文体はまさに「冷血」。波瀾万丈はカポーティからできた言葉なのかと思うほど。最近読んだ冷血の裏話は面白い。2023/06/01
二戸・カルピンチョ
19
ジェラルド・クラークが10年掛けて仕上げた。膨大な資料や多くの人へのインタビュー、そして当然生きているトルーマンへの綿密な取材。凄いよ、凄い本だよ。米国では1988年に出版されたらしいが、そう、そんな昔の本なのね…私自身は「冷血」はそれほど面白く思えなかったが、トルーマンが全身全霊でやってのけた作品だと知る。なぜトルーマンは作家として成功しなければならなかったのか。彼の求める愛とはなんだったのか。もっと自分を愛してあげれば良かったのに。愛があることで小説が書け、成功したことで書くことに苦痛を感じ、愛が滑り2020/09/20
ゆきえ
10
最後のほう、もう、カポーティがかわいそうでかわいそうで、涙が止まらなかった。今思い出すだけでも涙が出てくる。この気持ち、すっごくよくわかるようになっちゃったんだもの。ということは、私も以前より苦しいことになっているのかな。わからないけれど、そういうカポーティと同じ経験はしたということ。それは確か。私の脳も委縮し始めているのかもしれない、とは思う。本当に天才だと思う。この本に出てくる作者の本も全部読みたいのだけど、みつからない。探そう。2018/01/09
maja
7
本書を読み終え、「冷血」で迫りくる暗転の不穏さを庭に植えられた一本の花の影で描写していたのが印象に残った事を思い出した。丹念な取材で明かされていくカポーティの実像。大変なエネルギーを持って「冷血」を執筆したのだということが解り、今更ながら読んでいて良かったと思った。 「彼は彼の主題をとことん堀りつくしたが、同時に彼の主題も彼を堀りつくし、神経や忍耐心の貯えや集中力を涸渇させた。要するに人間としての元手も作家としての元手も底をついてしまった」 2018/02/03