出版社内容情報
怪異地に充ち、悪漢跳梁し、龍が飛ぶ。現代人の想像力を遥かに越えた豊潤な異記の世界が、気鋭の美術史家によって掘り起こされる
内容説明
中国「筆記」の豊饒な世界を語り、現代の偏狭な常識をことごとく粉砕する痛快無比の全十八篇。
目次
酒杯流行
いか墨奇聞
逸思奇僻のひとびと
鶴の変容
孔子の木履
鳥のことば花の声
橋の上から
蜃気楼
怪肉
猿啼く夜に
鼠癖
ツプテン・ラマのこと
琵琶を抱く猿〔ほか〕
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
アカツキ
8
テーマにそって中国古今の伝承や風変わりな話を詰め込んだエッセイ集。いかと鶴の話が面白かった。中国料理にイカ墨を推した料理はないが、イカ墨は半年から1年で消えるから詐欺に使われていたらしい。そして、同じ食べ物の話でも岩層から出てきた肉塊の話は不気味。犬が食べて大丈夫だから食べたという男、強者過ぎんか。えぇ?美味しいんだ‥。太古食べられていた龍は飼われていて騎乗したり食肉になったり、鶏肉に似て柔らかくて極めて美味らしい。中国で闇鍋したら日本以上にカオスになりそう。2024/12/09
韓信
1
辰年らしい読書をと思って読んだが、龍の本ではなく中国歴代の筆記小説の、酒杯、鶴、鳥や花のことば、蜃気楼、猿、詐欺師などにまつわる奇話をとおし、中国の社会習俗に触れる学術エッセイだった。著者は中国美術史家とのことだが、筆記小説の博捜ぷりに圧倒される。個人的に面白かったのは、経年で消えるイカ墨でニセ契約書を作る詐欺が宋代に流行った話や、龍の肉が鶏肉に似ているという話(龍=ワニならば納得)。著者が北京の市場で見た梟や鶴の肉が、お上の外国人観光客向けのパフォーマンスだった話は、隋代の外国使節への饗応を彷彿とさせる2024/01/07