出版社内容情報
日本軍による虐殺の傷が癒えやらぬシンガポールに、たったひとり嫁いだ日本人が見つめた華僑社会、東南アジアの戦後。感動の自叙伝
内容説明
一九五一年、一月。鮮やかな青空に白い雲の飛ぶシンガポールの港の波は、南国の陽にきらめいていた。揺れ動く小舟から、色白の肌の美しい日本女性が、腕に赤子を抱いて上陸しようとしていた。岸に飛び交うのは英語と中国語。この土地には、当時、大使館もなければ、一人の日本人もいなかった。陳儀文―日本名、上田勢子。土地の人びとはまだ、日本に対する戦争中の憎しみを忘れてはいない。彼女がここで頼れるのは、自分の健康と才能。太陽のような性格の明るさ。そして中国系の夫の存在だけであった。それから約半世紀、繁栄のシンガポールと運命を共にした一人の女性の半生が生き生きと綴られる…。
目次
第1章 朝鮮半島・群山
第2章 出逢い
第3章 シンガポールの花嫁
第4章 歴史の疵跡のなかで
第5章 女として
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- 和書
- 春の小夜