出版社内容情報
終戦直後、ヤミを拒否して死んだ山口良忠判事の一生を同じ法律家の著者が克明に追った。いまは忘れられつつある"戦後"が彷彿とよみがえる感動のノンフィクション
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
時雨
1
昭和22年10月11日に栄養失調でこの世を去った山口良忠判事の名前は、終戦後の食糧難に喘ぐ列島に衝撃をもって受け止められた。「食糧管理法違反の経済事犯を裁く立場にある以上は配給食糧以外を食べてはならない」──遵法精神と高潔さでもって混乱期に法の威信を守った殉教者なのか、妻子を棄てて法と心中した自己陶酔型の利己主義者なのか。彼の生い立ちから死の行進に至るまでの過程を丹念な取材で掘り起こし、当時の生活苦の記憶とともに忘却されつつあった判事の人となりを伝える一冊。昭和57年10月、判事の死から35年後の初版。2024/06/30