出版社内容情報
失踪中の夫が帰ってきた。ただしその身は海底で朽ちていると。死後の軌跡をたどる2人。心震わせる哀しく深いゴースト・ストーリー。
内容説明
なにものも分かつことのできない愛がある。時も、死さえも。あまりにも美しく、哀しく、つよい至高の傑作長篇小説。
著者等紹介
湯本香樹実[ユモトカズミ]
1959年東京生まれ。東京音楽大学音楽科作曲専攻卒。1993年、初めての小説『夏の庭―The Friends』で日本児童文学者協会新人賞、児童文芸新人賞を受賞。同作品は映画化・舞台化されたほか、十数ヵ国で翻訳出版され、米・ボストン・グローブ=ホーン・ブック賞、ミルドレッド・バチェルダー賞等を受賞した。また2009年、絵本『くまとやまねこ』(酒井駒子画)で講談社出版文化賞絵本賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
みも
207
湯本さんについてはあまり詳しくないけれど、こういう作品も書かれるのですね。僕だけかもしれませんが、村上春樹さんの匂いを嗅ぎ取りました。繊細なタッチと薄い空気感。展開される事象には些か唐突感があるけれど、決してそれは強引な筆遣いではなく、微妙な違和感を易々と乗り越える。そこには雲のじゅうたんにでも寝そべっているような、いつまでもそこに留まっていたいような心地よさがある。夫婦とは奇妙なもの。傍らにいない事に気づいた時、心は乱れ、その残像を探り、圧倒的な不在に言葉を失う。さて妻は、どちらの岸辺にいるのだろうか。2020/08/24
おくちゃん🍎柳緑花紅
95
夫が失踪して三年、生きているのか?死んでいるのか?夫の好きな白玉を作る台所に夫が現れる。しかし彼はもう死んでいるという。二人で旅を続ける中で気づく事、望むなら死者と生者は繋がれる。しかしやはり別れの時がくる。「行かないで」の声が切ない。血の繋がらない者同士が縁あって夫婦になるって実は凄い事なんだと、夫婦の別れというものが心の奥をチクチクと刺す。いつか必ず別れが来るのだ。文中の[一度死んだことも、いつか死ぬことも、何もかも忘れて今日を今日一日の為だけに生きるそういう毎日を続けていく、ふたりで]が心に残る。2015/07/18
nonpono
85
静謐な物語。失踪したかと思った夫が帰ってきた。3年、待っていた。半分生きているような半分冥土に足を突っ込んでいるような夫を。やはり、夫は存在しなくて、御霊だけが浮遊しているようだ。そんなあなたとの旅はなんて、哀しいくらい落ち着くのか。結末なんて、わかるのに。だけど、抱き合うより、お互いの過去の男女の話、髪を切りひげを剃り、気持ちが違うほうにいっていたら、夫の耳たぶを切ってしまう刹那、色っぽいね。つやつやしている、行間がすごい。まさに、ラブ、イズザ、ミステリー?、iPodから明菜ちゃんの若い歌声が流れたよ。2024/08/08
mike
84
3年前に突然失踪した夫が現れた。「出かけよう」と言う夫に付いて妻は旅に出る。それは夫が死後辿った軌跡であった。恋愛小説だが、美しい絵画を眺めているような、雲を掴むような柔らかなファンタジー。あぁもっと刺激をください。2023/03/08
あつひめ
83
悲しくても辛くても愛しい人を探すために泣きながらでもご飯を食べる。それが残された人のやるべきことなのだろう。残された人は消えた人の分まで時を背負わねばならない。そうやって、自分の心を慰めるように生きるのだろう。2015/11/15
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