出版社内容情報
記者と取材源の逮捕という前代未聞の事件に、世論は沸騰した。だが狡猾な国家権力は、起訴状でふたりの秘められた関係を暴露した。
内容説明
国家機密は誰のためのものか?密約を追及する弁護団の前に立ちふさがる、強大な権力。記者生命を失った弓成が見た光景とは―。徹底した取材と執筆に十年をかけた壮大なドラマ、いよいよ佳境へ。
著者等紹介
山崎豊子[ヤマサキトヨコ]
大阪市に生まれる。京都女子大学国文科卒業後、毎日新聞大阪本社に入社。昭和32年、処女長編「暖簾」を刊行。翌33年、「花のれん」で第39回直木賞受賞。以後、それまで聖域とされていた分野をテーマとし、意欲的な長編を発表し続ける(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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やま
96
女事務官の恨みが弓成亮太を潰す…。シリーズ3作目。字の大きさは…中。 国家公務員法111条違反(そそのかし)に問われた毎朝新聞政治部記者の弓成亮太は、国家公務員法100条(秘密を守る義務)に問われた外務省安西審議官付きの女事務官の三木昭子の嘘に塗り固められた証言で裁判を戦う物語です。 物語は、東京地方裁判所では、外務官僚の逃げの証言が続き。女事務官三木の私は、一方的に弓成に脅迫されて、肉体を奪われて、精神的に従うしかなかったと言う嘘の証言を裁判官が吟味し判決を下します。🌿続く→2021/06/10
優希
85
裁判もどんどん佳境に入っていきます。裁判の後半の裏表を見ることができ、とても興味深いものがありました。知る権利、秘密に該当しない主張が入り乱れる戦いは、検事と弁護士という単純なものではなく、キャリアも関係してくることが分かります。一審控訴審と最高裁の判断が異なるというのもその要素があるということでしょう。最高裁で上告が棄却され、有罪判決が出たのに国家の黒さを感じました。運命はどう転がるのか。最終巻にいきます。2016/05/10
ミーコ
46
ページをめくる手が止まりません。引き続き4巻へ…2016/03/18
キムチ
45
上級審に進み、結審するまでを事実の描写で繋いでいる。筆者の価値観が観察の眼として裏張りされている感が強い。事件が明るみにされ、訴追を受けた後、共犯者は男女という事もあり、完全にばらばらの道へ走って行く。高裁段階で再度、三木の出廷が目論まれたが彼女の気持ちはひたすら「一般人としてひっそりと過去を忘れたい」ポーズ?とはいうものの、確りマスコミに足跡を残している。そそのかし論への解釈。筆者言うように 上級審へ行くほどに「保守化」のそしりは免れない。最後の方で、揺れ動く由里子の在り様が子供らの姿とともに描かれる。2014/02/10
Kaz
17
ちょっしたボタンのかけ違いから転落する人は少なからずいるもの。主人公である弓成記者も御多分に洩れず、新聞社を退職する羽目になり、故郷に戻るものの父親の興した企業を潰してしまい失意の日々を送ることになる。挫折を知らない人ほど、一度のつまづきに対する耐性が案外なかったりするのかな。人生、思い通りに行かないことに遭遇し、傷ついたり痛い目を見たりしないと、人としての成長は望めない。自分にできないことを自覚して、謙虚さを身につけて初めて人は大人になる。この意味で弓成記者は人として欠けたものがあると言わざるを得ない。2018/01/08