内容説明
朝顔栽培だけが生きがいの同心・中根興三郎は、宗観という武家と知り合ってから、思いもよらぬ形で「桜田門外の変」に巻き込まれていく―第15回松本清張賞受賞。
著者等紹介
梶よう子[カジヨウコ]
東京都生まれ。フリーランスライターのかたわら、2005年「い草の花」(『小説NON』2005年7月号)で第一二回九州さが大衆文学賞大賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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初美マリン
122
幕末を背景に井伊直弼との交流、今は目の前の物に真剣に取り組み結果は後世が判断すればよいと、潔くとても良い作品だった。2020/02/15
なゆ
75
『ヨイ豊』が良かったので、かねてからオススメされてたこちらも。なるほど、奥深い朝顔の話、いろんな意味で朝顔に魅せられた人たち、そして幕末に向かうゴタゴタと私好みの話。うだつの上がらない同心の中根興三郎は、朝顔の栽培と交雑が趣味というか生きがい。いつか、奇跡に近いといわれる黄色い朝顔を咲かせるのが夢だ。そんな興三郎も、知らず知らず幕末の騒動に向けて巻き込まれていく。荒らされた庭を三人が片付けている光景が、奇跡のようなその時間が切ない。けれど、だいぶ時間が経ったラストはとてもいい。井伊直弼の印象が変わった。2016/03/23
ぶんこ
56
とても面白かったです。桜田門外の変までの井伊直弼と暗殺者の三好貫一郎(関鉄之助)との、朝顔栽培を通して友情を築いていた同心中根興三郎。興三郎の欲のなさ、黄色い朝顔を夢見て地道に朝顔を育てる姿が微笑ましい。血生臭い尊王攘夷の世の中では稀有な存在だけに、井伊直弼や三好たちにとっては貴重な友となったのでしょう。情深い興三郎の哀しみに共感し、久々に集中しすぎて家族に呆れられる有様でした。2019/11/28
おか
55
「迷子石」以来の梶さん。らしいなぁ という文脈。自分なりの路を見つけ 生き始めたが 周囲の事情に翻弄され 生きにくい路を選ばなければならない侍。主人公は兄の急逝に伴い 学者の路を諦め 家督を継ぐ。その彼の唯一の生き甲斐が 朝顔の交雑。交雑によって 一生に一度しかお目にかかれない朝顔もできる。そんな平和を邪魔するのは やっぱり政治という怪物。最後 梶さんらしい表現だけど うーん もうちょっと 詳しい描写が欲しかったかなぁ( ◠‿◠ )2019/03/31
星群
42
夏に出逢えてよかった本。早朝、朝顔の花弁が綻び、咲きだす頃に思いを馳せる。朝顔の歴史って、こんなにも長く奥深いものだったのかと、改めて思う。時は幕末、様々な人の思いが交錯する。里恵さんのことは、哀しすぎる。其々の背負ってるものを置いて、只、朝顔の下に集う仲間であれたら、どんなによかったろうと思わずにはいられない。2014/08/08