出版社内容情報
旦那の尻尾を摑んでやろうぜースイミングスクールで知り合った美穂と秋郎東北へと向かう。男女に微妙な変化をもたらす七つの小さな旅。
内容説明
隣家の男と、夫の旅先へと後を追う妻。日常がほどけていく8篇の短い旅。
著者等紹介
井上荒野[イノウエアレノ]
1961年東京都生まれ。成蹊大学文学部卒。89年『わたしのヌレエフ』で第一回フェミナ賞を受賞しデビュー。2004年『潤一』(マガジンハウス)で第一一回島清恋愛文学賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ケイ
130
旅に関する短編8つ。どこにも旅情はない。男女の情が絡む。細くねっとりと絡む。でも、心の奥までは絡み取りきられていない。男も女も。どうしようもないやるせなさを抱えて、もしかしたらすごくひどい状況にいる自分なのに、ほんの少し客観的な視点を持っている。自分に、自分の不幸に酔っていない、それが読後にいい余韻を残している。不倫は誰をも不幸にするのだと思った。しかし、好きになってしまえば仕方ないのだろうとも思う。結婚していない二人なら、他に好きな人ができれば別れるのに、夫婦なら大抵は別れない。紙一枚の凄まじい重み。2016/09/28
ベイマックス
73
可もなく不可もなく…。2023/08/25
ぷく
26
『ここではないどこか』に行きたいと、焦っていた時期がある。 帰り道、いつもより、ひとつ手前の角を曲がると現れる、見慣れない風景。心が浮き立つけれど、しばらく歩くと、年中雨戸を固く閉ざしたままのあの家の屋根が見えてきて、ああ、結局私は今日もどこにも行けなかったと思う。でも心のどこかでほっとしている。男も女も、帰るべき場所、戻れる場所があるからこそ、どこかに行きたいと思うのだろうか。救いがないとは思わない、ただ、誰も救いを求めていないだけ。今の私に、ちょうどいい一冊だった。 2019/05/05
のり
25
とりとめもなく、オチがしっかりついているわけでもない、どうしようもない男女の、旅にまつわる短編集。家族旅行に父の不倫相手が合流する話は、半分自伝なのかなと推測する。ずるくて、ぬるい、男女の話は、著者の十八番。このぬるま湯は、何だかクセになるんだなぁ。今回もスルスルと流れるように読んでしまった。2023/09/03
あまりりす
21
荒野さんの本、9作目です。いつも思うのですが、ぐいぐい惹きこまれる感じでは、ないんですよねぇ…足を取られて、気づいたら嵌っている、に近い感じ…で、一気に読んでしまうんですよね(_ _;)緩やかに、でも確実に、掴まれてしまうんですよねぇ。全部良かったんですけど一番好きだと感じたのは「三日前の死」です。ああ…絶対また読みたくなるなぁ…図書館本ですが、手元に置きたい本になりました。2016/03/26