内容説明
北海道に生きる男女の性をまったく新しい筆致で描く“新官能派”鮮烈のデビュー作。
著者等紹介
桜木紫乃[サクラギシノ]
1965年、北海道釧路市生まれ。裁判所職員をへて、2002年、「雪虫」で第八十二回オール讀物新人賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
うしこ@灯れ松明の火(文庫フリークさんに賛同)
54
「雪虫、霧繭、夏の稜線、海に帰る、水の棺、氷平線」北海道を舞台にした短編集全6話。デビュー作だからかもしれませんが、前回読んだ「ラブレス」と比べるとちょっと物足りなさを感じました。読んでいて息苦しさを感じさせる話ばかりで、読了感は決して良いものではありませんでしたが、閉鎖的な社会から何とか逃れようと足掻く彼女達の姿がいつまでも頭から離れませんでした。とある和裁師の独り立ち描いた「霧繭」の話が一番好き。彼女の生き方がどこか「ラブレス」の話を思い出させました。「氷平線」は母親の愛情が重かったです。★★★2012/07/28
ミーコ
45
暗いんだけど嫌いじゃない。少しの希望が見える「雪虫」と「霧繭」と「夏の稜線」が、良かった。達郎とマリー 辛かったけど、ようやく心から夫婦になれそう。師匠 真紀と弟子の やよい 本当の意味で絆が出来て 未来が開けると思う。京子… そこまで耐えなくても良いのにーと心が痛くなったけど、真由美と一緒に新しい人生を歩んで、幸せになって欲しい。 中々 面白く読む事が出来ました。2014/06/30
ヒデミン@もも
44
これがデビュー作。胸が押し潰されるかと思うほど痛く冷たい。うっすらと涙が滲む。こんなにもこんなにも哀しい。この作品を読めたのは、今の私が幸せである証。いろんな女の人生がある。2014/12/23
薦渕雅春
39
6話からなる短編集。本著『氷平線』が初めての単行本とのこと。第1話の「雪虫」は「オール讀物」2002年5月号に掲載され、第82回オール讀物新人賞を受賞。第4話「海に帰る」も「オール讀物」2003年5月号に掲載されたものだが、あとの4話は書き下ろし。どれも著者の特徴のよく出ている、男女間の愛情、業を感じさせてくれる作品だったと思う。主人公の職業も酪農家だったり、和裁師だったり、理容師だったり、歯医者だったり様々。どの作品ももっともっと膨らませそうだし、手を加えれば長編になるか!映像化も期待出来る作品ばかり。2020/06/23
konoha
30
ずっと読みたかった桜木紫乃さん。美しいタイトルと表紙に惹かれて、選びました。上質な短篇が揃い、読みやすかったので、ほぼ一気読み。北国の閉塞感、逃れられない境遇や人の闇を書いていますが、ゆったりとした柔らかい文体だからか、嫌な読後感にはならなかったです。夢か現かわからない、静けさや奥行きのある作品世界が魅力的。酪農、和裁、床屋など、仕事の描写も、この世界を作るのに欠かせなかったと思います。夏の稜線と海に帰るが特に印象に残りました。表題作で、タイトルの意味がわかって良かったです。2021/01/30