内容説明
小山が後輩の荒木から勧められた料理店は、一風変わったところだった。場所は訪れるたびに変わり、顔を見せる店員は三十代と思しき女将がひとりだけ。そして、毎回違う若い女性が食事に相伴してくれるのだ。戸惑いつつ、女性たちと会話を続ける小山は、しだいにその店の雰囲気に惹かれていくのだが…。
著者等紹介
森博嗣[モリヒロシ]
1957年生まれ。工学博士。某国立大学工学部建築学科助教授の傍ら、1996年『すべてがFになる』で第1回メフィスト賞を受賞し、小説家としてデビュー。小説のほかにも、エッセイや趣味の本など、多方面で活躍中(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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まーちゃん
30
店の名は分からず、場所も毎回変わり、一人きりでしか利用できず、その代わり?希望すれば食事の所作の非常に美しい女性が一緒に食事をしてくれるという店に通い続ける大学教授のお話。不思議な空気感で、最初の一篇を読んだ時は、5W1Hをわざと特定できない様に書いているのかと感じました。読み進むにつれ、ここに書かれているのは教授の様々な思索だけで、何人かいる他の登場人物は、教授の思索のヒントや後押しになっているだけのように思われて、読み終わった時は哲学書だったのかと感じました。(哲学書を読んだことはないです・・)2013/02/18
Yuka Saito
23
後輩の荒木から紹介された『一期一会』の料亭に通うようになった小山教授。一期一会の名に相応しく、場所も相伴してくれる女性も本当に一回しか出会えない。が、小山教授はそこで必ず漠然とした何かにふと気づきその一片に対してほんの少しの時間だけ深く想う。それは孤独であったり様々な手に掴むことができない何かなのだが。森先生はどんな気持ちでこの短編集を書いたのだろう。哲学的な匂いもするし、何だか戻れないところにどんどん嵌っていくような怖さも感じる。ちょっと違うかもしれないけど、人間の背負うスパイラルのような。2013/06/07
秋製
23
この本の感想はちょっと難しいです。大学の教官である小山は後輩の荒木から不思議な店の話を聞いていた事を、彼が行方不明になったのを知り思い出します。その店の場所は毎回変わります。店に電話をすると、車が迎えに来てその日の場所へ連れて行ってくれるというもの。この話で思った事は、都市伝説にありそう。な感じでした。2013/01/12
神太郎
22
突然いなくなった荒木。そんな彼から不思議な店を紹介された小山先生。ご飯を名も知らぬ見知らぬ女性と一緒に食べるだけというシステム。変なことはない。ただ黙々と食べ会話する(会話をしないときもある)。女性とは一期一会。同じ人は来ない。こういう設定がなんとも文学的?ではないだろうか。小山先生は会話や女性の所作、雰囲気から色々なことを悟っていく。しかし、ラストはえっ、どういうこと?と思ったがラスト数話からは女性との会話シーンをあまり明確に語らなくなったからなにか起きたのか心情的に何かを悟ったのか。不思議な短編集。2023/03/25
kishikan
20
装丁、ノベルズということもあり、エンタテインメントと思いきや、これは思い切り小説。森がミステリではなく、文学小説を書くとこうなるのかと思いつつ、気に入ってしまった。五感、記憶、現実と夢、タイトルからは想像もつかない内容が、不思議な感覚を呼び起こす。2008/01/16