内容説明
謎の紳士ミスター・マリナー。“釣遊亭”の客たちは、今日も氏の披露する物語に耳を傾ける。気弱な男たちの窮地を救う薬“バック‐U‐アッポ”の驚愕の正体、どんな男も恋に落ちる美女ロバータ嬢の八方破れの行状、ハリウッドのトラブルに悩まされる心優しい青年の活躍などなど、ミスター・マリナーの親戚たちの奇想天外&痛快無類の活躍!ウッドハウス自身がいつも楽しんで書いていたというマリナー・シリーズ、よりぬき傑作選であります。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
星落秋風五丈原
22
「釣遊亭(アングラーズ・レスト)」のバー・パーラーに夜毎現れ、皆の話が盛り上がった所で、「ひとつ〜の話を聞かせましょう」と切り出す。但し、タイトルには『冒険譚』と銘うっているが、何もこれ、「マリナー氏が世界各国で冒険を繰り広げた」「歴史的事件の背後にはマリナー氏あり」なんてしろものではない。マリナー氏はあくまで語り手で、主人公は彼の弟や姪っこ達である。それもどこまで本当だかわからない、という所からとってもアヤシイ。だって、知人、親類にこれだけ変人が揃っている人なんているだろうか?2007/11/05
きりぱい
10
釣遊亭に訪れては、マリナー氏が語る親戚たちのちょっといい話。冒険譚と付いているくらいだから、どれもあちこちでの痛快なドタバタ話。変人振りが濃厚なのは従妹の娘ロバータ・ウィッカム。美しく活発だけれど、皮肉なユーモアを越えていまいましいほど、はあ?と受け入れ難い女なのだ。ひどい目にあった男たちが見限ってくれなければ不満が残るところだった!お気に入りは牧師のオーガスティン。間違った強壮剤でいい方に転ぶエピソードが愉快。口汚い悪口も飛び出しながら上質に魅せるユーモアは、面白いのに最後にほっとなごめるのがいい。2011/12/29
歩月るな
6
「だって、蛇なんか持ってたら、誰だって別の人間のベッドに入れたくなるよなあ」マリナー氏の語る身内話、ではあるのだけれど読んでみると、あいかわらずのらくら倶楽部の面々がろくでもないドタバタに巻き込まれる様が描かれている。ほんとうにろくでもない。しかしこんがらがった状況を的確に纏め上げ結末に収斂させる手腕は他にはない技術。ウッドハウスにはなれない。註が無い事についてはあとがきなどで付言されている通りだが、さすがに向こうの歴史に少し通じると、なるほど唸らせる例えや言い回しが随所に見られるのがさらに爆笑をさそう。2018/09/21
左近
4
ウソかホントか、酒場に集う釣客相手にマリナー氏が語る、一体、何人いるのかわからない親族達の悲喜交々体験談。ジーヴズものでも幾多の男性を“スープに漬からせた”実績を持つウィッカム嬢が、ここでも着実に犠牲者を増やしているし、ジーヴズ特製ドリンクの主成分らしきマリナー印バック-U-アッポが、効果抜群すぎて事件を引き起こす。有閑階級の人々が、ある意味、どうでもいいことでしっちゃかめっちゃか大騒ぎのウッドハウス・ワールド。前にも書いた気がするけど、全作品の翻訳出版を強く願う(できればE・D・ホックも)。2013/05/09
よしゆ
4
男女の恋愛をからめたドタバタを書かせたらこの人の右に出る作家はいないんじゃなかろうか?今回もたっぷり楽しませてもらった。特にロバータの天然魔性っぷりが凄い。自覚ないままない男達をどん底へ突き落とす、これぞ真の悪女というものだ。2010/12/16