うつつ・うつら

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  • サイズ B6判/ページ数 153p/高さ 20cm
  • 商品コード 9784163259307
  • NDC分類 913.6
  • Cコード C0093

内容説明

壊されてはならない。大切な言葉を、本当の名前を。彼女の名は「マドモアゼル鶴子」、場末の劇場で受けない漫談を演っている。外から流れこむ映画のセリフが漫才を損ない、九官鳥がくりかえす言葉は意味を失い、芸人たちは壊れていくが、鶴子は…。文學界新人賞受賞作「初子さん」収録。

著者等紹介

赤染晶子[アカゾメアキコ]
1974年、京都府宇治市生まれ。京都外国語大学卒業、北海道大学大学院博士課程中退。2004年、「初子さん」で第99回文學界新人賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

yumiha

39
表題作よりも「初子さん」が私のツボだった。京都を評しての「歴史や伝統を背負ううちに、水が水銀になった」「何も知らない外の人間から見ると、いつまでも美しい水に見えるのは本当は水銀だからである」という見方は、うならされた。京都という町に憧れる人は多いのだろうが、実は何やら重苦しいしきたりやら価値観やらが底流にあることを「水銀」に喩えたセンスに敬服する。他にも作者赤染晶子の物事を見抜く鋭さが散見できる。「うつつ・うつら」は、九官鳥が得てゆく言葉は音に過ぎないが、赤ん坊は世界までも鷲掴みというのが印象に残った。2021/03/30

みねたか@

35
大阪の場末の劇場を舞台にした表題作。やや冗長な感はあるが,閑散とした客席を相手に同じネタや噺を繰り返すうち,芸を失い,自分自身も失われていく様には冷え冷えとした恐怖を覚える。もう一編の「初子さん」は,昭和50年代の京都が舞台。大好きな洋裁を生業としたのに変わらない日常にいつしか疲れを覚えてきた初子さん。同世代の若奥さんの苦しさに触れ,熱発した実家の母の看病をするうちに,彼女が自分を見つめなおす様を描く。下宿のパン屋親子,お客さんたちとのやり取りも丁寧に描かれ、心を温かくしてくれる。2022/05/06

25
読んでいてとても苦しくなりました。文章は読みやすいのですが、描かれる世界が重く沈み込んでいて、どこにも行けない哀しみがありました。鮮やかに、醜く歪んでいました。でも嫌いではなかったです。むしろ、動けない感じが好きでした。2016/02/18

tom

13
初読みの作家。「初子さん」は奇妙に面白い。何が面白いのか言語化できないのだけど、なかなかの文体というか、文体と登場人物がシンクロして、登場人物が目の前に現れてくるような感覚。一方、表題作は、途中で挫折。作者は、何か考えているのだろうなという感じはあるものの、私のボロ頭では、物語世界の入り口で、入場を拒否されたようなもの。不思議な作家です。2017/10/16

きのこきのこ

9
2つのお話。読みやすいのは『初子さん』あんパンかクリームパンか食べてみないとわからないパン屋ってなんなの⁈『うつつ・うつら』は読みづらかった。「わて実はパリジェンヌですねん」これだけで笑える。おフランス漫談めっちゃ面白い!漫談中に被せて下の映画館から聞こえる「あっれーーーっ」「とのーーーっ」さらにさらに鳥かごの九官鳥合いの手がカオスで可笑しい。なんかよく出来たドリフのコントみたい。笑いだけじゃなく不条理で不穏。九官鳥に名前を取られてはいけない、そこは千と千尋ぽい。2023/09/04

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