感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ふじさん
101
藤沢周平の葬儀で、井上ひさしが読み上げた弔辞のタイトルが「海坂藩に感謝」でも分かるように、海坂藩は架空の藩だが、彼の作品では大事な場所だ。本作は、その海坂ものの短編を収録した作品。静かな木からの3作「岡安家の犬」「静かな木」「偉丈夫」は、最晩年の作品で渋く趣きのある作品。「梅薫る」の江口の隠された真実に武士の潔さと優しさに心が痛む。「泣くな、けい」の主に対するけいの献身的な働きが泣かせる。「泣く母」は、最後のシーンが圧巻。「山桜」「花のあと」は、何度読んでも新たな感動が。読者の心に沁み込む作品集に脱帽。 2022/08/19
モトラッド@積読本消化中
36
★★★★★藤沢先生の短篇を、“海坂藩もの”で括って、上下巻で纏めた短篇集。上質な装丁と、掌に馴染む適度なサイズが嬉しい。本文の文字も大き目です!全集は全て、文庫本も殆ど揃えている身としては、読み込もうと思った折りに、書棚から取り出す際の、上梓の時期的なもの、藤沢先生の括り方の意思、物理的な手触りなどが重要なファクターに成って来ます。そんな時に、この“海坂藩大全”は、頬ずりしたい(恥ず)ほど愛おしい二冊になりました。表紙側の帯に、先生の顔写真があしらわれているのも、素敵です。あまねくお薦めします。⇒2025/05/11
matsu04
23
海坂藩モノの短編11編。「梅薫る」「泣くな、けい」「鷦鷯」。いずれも胸が熱くなる、心が洗われる。「泣く母」も何とも素晴らしい。よくぞ書いてくれたと心底感謝したい。「切腹」もいいし「花のあと」も面白い。「静かな木」も深い余韻が残る。いずれも短編とは思えぬ秀作ぞろい、これぞ藤沢周平、文句なしである。(再読)2022/12/26
AN
21
イベント[海坂藩城下町 第8回読書の集い「冬」]で読んだ。目当ての「山桜」が入っていたので手に取ったが、「花のあと」まで入っていて驚いた。短編全11作品が入っている。著者の作品展らしく自然描写が美しく、穏やかで余韻を残す終わり方が嬉しい。「泣くな、けい」はどうも理解しづらい作品だった。主人から手込めにされた奉公人が紆余曲折を経てその家の嫁として迎えられることになるのだが、江戸時代の奉公人はこの様な扱いでも良いのかな。最終的に雇い主が責任を取ったのでよしとするの・・・かな。 2023/01/14
あまみ
17
【上巻下巻とも同じレビューです】海坂藩が舞台またはゆかりのある人が登場する短編集。ユーモラスなものも、夫婦愛親子愛武士のけじめいろいろな作品が収められています。藤沢周平さんの小説は好きでよく読んでいます。この「海坂藩大全」を見つけて、だいたい読んだ作品だろうなと思いましたがすぐ買いました。読んでいるうち思い出したりして多くは再読でしたが、面白かった。下巻の「泣く母」が特に良かった。250を超える藤沢作品のうち、海坂ものは長編9,短編22(解説より)ある。うち21篇が大全に収録されている。2022/04/29
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- 和書
- 乙女の美術史 〈日本編〉