出版社内容情報
第135回芥川賞受賞作!
暑い日の一日。僕は30歳を目前に離婚しようとしていた──。
現代の若者を覆う社会のひずみに目を向けながら、その生態を軽やかに描く。
内容説明
暑い夏の一日。僕は30歳を目前に離婚しようとしていた。現代の若者を覆う社会のひずみに目を向けながら、その生態を軽やかに描く。第135回芥川賞受賞作ほか1篇を収録。
著者等紹介
伊藤たかみ[イトウタカミ]
1971年兵庫県生まれ。95年早稲田大学政治経済学部在学中に、「助手席にて、グルグル・ダンスを踊って」で第32回文藝賞を受賞しデビュー。2000年「ミカ!」で第49回小学館児童出版文化賞、06年「ぎぶそん」で第21回坪田譲治文学賞を受賞し、同年「八月の路上に捨てる」で第135回芥川賞を受賞する(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
遥かなる想い
328
第135回(平成18年上半期)芥川賞。敦と知恵子の離婚に至る心の動きを,敦の視点で描く。変な表現だが、壊れていく男女の描写に奇妙な味わいのようなものがあると感じたのは、私だけなのだろうか。学生の頃に抱いたお互いの夢に破れ,現状を受け入れられない知恵子の振る舞いは、ひどく哀しい。バイト仲間の水城さんのキャラがサッパリしており…それが逆に、知恵子との関係を際立たせている。お互いが「離婚」というものを予感しながら,でも取り返すこともできない、心の叫びを,男女の哀しい心情を味わい豊く描き込んでいく…そんな本だった2014/02/08
ヴェネツィア
223
2006年上半期芥川賞受賞作。現代社会の一断面が強いリアリティを持って描かれている。3人称で書かれてはいるが、主たる視点人物はアルバイトで暮らす敦であり、より客観的に描かれているのが敦より2歳上の女性で、仕事仲間の水城さんだ。こちらは正社員。作家の想像力の確かさを示すのだろうが、特にこの敦の不定形な感情が実に巧みに描写されてゆく。しかも、その将来性はおろか、明日さえも定かでない、しかしそれでもこんな風に生きて行くしかない敦のやるせなさが、読者に如実に伝わってくる。なんだか、せつなくなってくる小説だ。2013/05/07
kaizen@名古屋de朝活読書会
207
芥川賞】表題作は運転士、自販機、家族。自販機に缶を入れて回る仕事。運転手が女性で、助手の男性がアルバイト。女性は離婚経験者、男性は明日の9月1日に離婚するという。そこが標題の8月と関係する。表紙に自販機があるのもうなづける。運転手は思いきりがよくさっぱりしている感じがする。あまりべたべたしていないので、通勤時にも読める。路上に捨てたのは思い出。あるいは思い出を路上で拾ったか。直木賞でもいいかも。「貝からみる風景」「安定期つれづれ」2014/05/15
ミカママ
191
読友さんお勧め、初読み作家さん。表題作に関して言えば、仲の良かったカップルがボタンの掛け違いでどんどん修復できない関係になってしまい離婚に至る、その過程がとっても静かに描かれています。主人公・敦のザラザラした感情が、それなりの夫婦の修羅場をくぐり抜けてきた私には痛いほどわかってしまって。読み手を選ぶ作品でしょうね。なんとなくですが、この作家さんはあまり幸せな結婚生活(既婚だとして)を送ってなかったのかな、なんて思いながら読了しました。2015/10/06
zero1
152
夏、飲料を自販機に補充する二人。先輩の水城はバツイチの女性。今日でトラックを降りる。相棒の佐藤はバイトだが、30歳で離婚届を出す寸前。二人の会話で「人とは何か」を表現。詰まる缶にセクハラ野郎も登場。人の交点はすぐ近くにあり、それを描くのが文学。私から見ると、光る表現が不足。特に佐藤と四年過ごした妻、知恵子の関係はもっと描けなかったか?短編二つも収録。文庫での解説は09年に「ポトスライムの舟」で芥川賞作家となった津村記久子。本書の選考会は割れた(後述)が芥川賞受賞作。受賞は妥当?2019/06/09
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