出版社内容情報
この気持ちはどこから来るのだろう?生命の誕生、まだこの世にやってきていないある魂との出会い・・・。作家生活20年目を迎えるよしもとばななさんが挑んだ書き下ろし長篇。
内容説明
妊娠、出産…よしもとばななの新境地!まだこの世にやってきていないある魂との出会いの物語。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
優希
53
命が愛おしくなるような作品でした。心に傷を負った女性が妊娠・出産によって再生されていくのがじんわりきます。子供ができてもすっと受け入れ、ゆっくり新たなことを求めていく姿が自分らしさを活かすことなのかなと思いました。キミコさんの生き方は何かを失う人生ではなく、足していく人生なのでしょう。静かに繊細に語られる色々な感情と日常が心に染み入る作品でした。何気ない移ろいが心を癒してくれる感じがしました。2014/08/27
エドワード
26
これは、吉本ばななさんが自らの出産を通じて感じたことを率直に描いた作品だ。新しい命を産み出す、畏れ、不思議、神秘、驚き。そして<産む性>の喜びと悲哀について。主人公のキミコと恋人の五郎は、世間的には遥かに自由を満喫しているように見えるが、感覚は真っ当だ。動物の剥製を見て気持ち悪くなる場面、私も全く同じだったので、共感できる。海辺のお寺、昔でいう駆け込み寺で、女性であることの辛さと誇りを感じるキミコ。でもそれがバネになり、五郎の子を妊娠していることが解かってからの日々の幸福感、読んでいて思わず頬が緩んだ。2020/05/18
よしみん
25
人生が動いていく瞬間が、その音が静かに聞こえてくる。心の消えない傷、不安定な関係、全てが満たされているとは言い難い。でも彼女が一歩一歩、進んでいくうちに世界が変わる気がした。重くて、気分が悪くて、時々不幸せなのに、温かい。こんな風に生きることを受け入れて行くことで、日常が煌めいていくのかと思った。あとがきで吉本ばななさんが出産されていたことを知って、すごく素敵だと感じた。一生に一度の初めての出産という特別な時をこんな風に描けるなんて。じんわり心に残る作品。2015/01/18
はっぱ
22
文章が、とても詩的できれいだった。文章一つから果てしない世界が広がっている。独特の世界があった。だけど内容は、人間の奥底を鋭くえぐって来る様な内容だった。生きるという事を感じさせる深い話だった。私は、子供が生まれた後の文章が好き。「明日はどうなるかわからない。誰がどう変わるかわからない。命も、誰のものがいつまでここにあるかわからない。今手で触れる人も、もう会えないかもしれない。でも今は、全てがここに調和している。私はここにいる。」2020/05/17
K(日和)
16
生と死に思いを巡らす。吉本ばななを読むときはいつもそうだ。何気ない一瞬の移ろいを、鮮明にも朧げにもとらえる。2014/08/05