内容説明
ボクさんは四十代独身のアパート大家。少しとろいけれど、ご近所や店子の皆に愛されて幸福に暮らしている。ある日、入居者の女が殺された。屋根の修理で梯子に上り、窓から死体を発見したボクさんは地面に落下。病院で目覚めると、アパートの住人全員が失踪していた。やがて彼は、自分を取り巻くものが善意だけではなかったことを知る。ひとは、何を以て幸福になるのか。「知る」ことの哀しみが胸に迫る書き下ろし長篇。渾身のミステリー。
著者等紹介
樋口有介[ヒグチユウスケ]
1950年、群馬県前橋市生まれ。業界紙記者などを経て、88年、『ぼくと、ぼくらの夏』で第6回サントリーミステリー大賞読者賞を受賞。90年、『風少女』で直木賞候補となる(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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あつひめ
97
のんびりと始まったストーリーが徐々にスピードを増してくる。心を世間の汚れから守るように石膏で固められていたものが、パカッと割れて中から別人のようなボクさんが表れて、物語を引っ張っていく。ハードボイルド風。謎を解き明かすのではなく、確認していく・・・と言った方が近いような展開だった。お母さんの言葉を生きる指針としているような暮らし方は、あ~こういう風に、人にも自分にも優しくなれるんだ・・・と感じた。ラスト日がづくにつれて、こちらも不思議な気持ちにさせられてくる。いつ、この夢が覚めるんだろうと。2013/04/01
ゆみねこ
56
母が遺したアパートの管理をするボクさんは40歳、知能は中学生レベル。良い人に恵まれ運のいい人生を送ってきたと自負していたが…。アパートで起きた殺人事件を目撃してからの出来ごと、このままボクさんに幸せな人生がと思っていたら。。月への梯子を上って行くラストが切なくて何とも言えない読後感でした。2015/01/06
ろけっと
21
主人公 福田幸男は40歳だが知能は小学校の中程度で止まってしまっている。自分のことを「僕、僕」と言うことから「ボクさん」と呼ばれている。 母親の遺してくれたアパートを管理することで生計をたてているが、住人がいい人ばかりで幸せ...だったんだが... なんか不思議な感じのミステリーだったが、結構楽しく読み終えた。ラストは賛否両論だろうが、個人的には嫌いではないかな。2010/09/26
スケキヨ
17
読んでいると「アルジャーノンに花束を」を思い出しました。最後、ボクさんはどうなっちゃうんだろうと心配していましたが、まさかこういう結末だとは。ボクさんの優しさと芯の強さと、ボクさんから見た世界に温かくなっていましたが、読み終えるとひたすら寂しいです。遊都子のこれからが心配です。2014/09/20
那由多
15
知的障害を持つボクさんはアパートの大家さんで、優しい人達に囲まれて暮らしている。しかしアパートの住人が殺され、残りの5人全員が失踪。犯人は誰?住人達は何処へ?一人で着実に真相に近づくボクさん。いい感じに収まったと安心してたら、まさかのエンディングに…。2019/03/20