出版社内容情報
氷男と結婚した女は、なぜ南極などへ行こうとしたのだろうか?不思議で楽しく、そして底無しの怖さを感じさせる短篇八篇を収録
内容説明
さめない夢なのかさめてからが夢なのか。氷男は南極に戻り、建築家は眠りの衣をまとう。台風の目が心を裂き、チョコレートは音もなく溶けていく。村上春樹の短編小説の世界。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
チャーリブ
46
表題作の「レキシントンの幽霊」以外の短編は、英訳短編集の「逆輸入版」2冊の中に入っています。本書に収録されている「トニー滝谷」がロング・ヴァージョンだと書いてあったので「逆輸入版」がショート・ヴァージョンなのかと思って手に取ったのですが違ってました。むしろ「レキシントン版」のほうが「逆輸入版」よりも幾分短く、いくつかの文章がカットされていました。個人的には、収容所で滝谷省三郎とともに死の判決を待っていた高級将校が発狂したエピソードはカットしてほしくなかったので、「逆輸入版」のほうを推します。○2023/03/26
Our Homeisland
31
まずまず面白かったです。ホラーともファンタジーとも違うような短編集で、正直、どう楽しんだら良いのかが分かりにくいなとは感じましたが、読みにくいということはありませんでした。村上春樹作品は今年になってから読み始めました。この転変集でも、随所に、「さすがにうまい表現で、文章がうまいな。」と感じさせるところが散りばめられていました。安定感があって、安心して読み進められるというのも、この作家の特徴だと思いました。2015/11/17
岡本正行
28
村上春樹の小説3冊目、解説本1冊読んだ。短編で、アメリカを舞台にしたものもある。スリラーものではあるが、それほどぞくぞく寒気がするまではいかない。そういう考え方や気分もあるなって感じ。小説としての文章は、この著者は、非常に優れている。さすが、村上春樹、ノーベル文学賞候補になるだけあると感心はした。一つひとつの小説は、テレビドラマにしたら、面白いと思う。脚本家や俳優しだいではる。2022/03/02
林 一歩
27
表題作が村上春樹らしい作品ではあるけれど、やはり"沈黙"が白眉。2014/11/04
詩 音像(utaotozo)
25
表題作では何故か映画の『シャイニング』を連想。「トニー滝谷」でクライマックスに「グレート・ギャツビー」からの流用らしき場面を見つけたのは、なんだか得した気分。「七番目の男」は松たか子の朗読で前に聞いており、なんとなく暗く捉えどころがないように感じていたのに、今回読んでみたら見事な再生の物語でとてもよかった。「めくらやなぎと、眠る女」は長尺版に次いで二回目だったが、前回以上に「ノルウェイの森」外伝的な意味合いが強く感じられ面白かった。2015/02/25