内容説明
中央アジア最深部、キルギスタンの首都ビシュケクは、氷河を頂く天山山脈の麓の知られざる国際都市。総合商社のモスクワ駐在員、小川智は旅客機2機を仲介するため交渉を開始する。テーブルの向こうでは、でっぷり太ったキルギスの運輸大臣が、黒縁眼鏡の奥に小狡そうな目を眠たげに開いていた。現地には、政治と戦争に翻弄された朝鮮人やドイツ人たちが暮らす。しかし、自分のすぐそばに、民族の運命を背負う別の男がいることを小川は知らなかった。ユーラシアの彩り豊かな四季の中、航空機ファイナンスは進行して行く。航空機ファイナンスで知る中央アジアの真実。
著者等紹介
黒木亮[クロキリョウ]
1957年北海道生まれ。カイロ・アメリカン大学大学院修士。銀行、証券会社、総合商社勤務を経て作家。2000年、国際経済小説「トップ・レフト」でデビュー
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感想・レビュー
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まつうら
36
シルクロードの国キルギス。古くから中国とヨーロッパを往来する途上にあるこの地域には、いろいろな民族と文化が混在する複雑な歴史がある。そこへ航空機を売りに行くのが物語の縦軸だが、中央アジアに暮らすいろいろな民族の思いが交錯するシーンが印象的だ。特に目をひくのがクルド人で、彼らは国を持っていない。安住の地がないのはとても悲しいことで、独立したいとの思いは切実だ。しかしユダヤ人のイスラエル建国の先例もあり、国際情勢はなんとも難しい。島国では意識しづらい世界事情。その一端を知る機会を与えてくれた著者に感謝したい。2022/07/21
ヤギ郎
15
黒木亮の経済小説。巻末には黒木小説お馴染みの用語集がある。共産主義から独立した中央アジア・キルギスタンを舞台に、日本人商社マンが航空機を売り込む。モスクワ・ロンドン・キルギスタンを行き来しながら、交渉を重ねていく。航空機ファイナンスも学べる。お金の調達方法っていろいろあるんだな。世界を相手にビジネスをしていると、国際問題に触れることがある。今回のキーワードは「クルド」である。著者による『エネルギー』も商社マンの小説であり、合わせて読みたい。大陸街道の上を飛行は飛ぶ。2020/04/05
sho
3
中央アジア、キルギスタンでの航空機ファイナンスを通して見る旧共産圏でのファイナンス組成の話し。旧共産圏での仕事や民族問題などが垣間見える。2019/01/19
SUZUTOMO
1
仕事で上司が貸してくださった本。ファイナンスについてはよく現場のことを調べていると思いましたし、自身も似たような経験もあるのですごく想像できました。共産主義の国って、やはり皆近いところがある。マネロンの件は強引すぎる気もしたけれど、クルド問題を上手く使ってるなと思いました。 紅一点のソフィアはジャンヌダルクそのもの。政治に関係する限り真っ白ではないが、単なる懐の儲け以上に愛国心がある。強く、(ほどほどに)正しく、美しく。どの国も新たな道を作るためには、茨を踏む強い精神力を持つ女性が必要ということか。2021/11/13
sohmah147
1
中東〜中央アジアの歴史と地理を思い出しながらビジネス小説として楽しんで読んだ2016/11/27
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