内容説明
私は旗師をやめない。狐は負けない。騙しあいと駆けひきの骨董業界を生きる“冬狐堂”こと宇佐見陶子を襲う眼病。付け入ろうとわけありの品を持ち込む同業者に立ち向かう。古美術ミステリー。
著者等紹介
北森鴻[キタモリコウ]
1961年、山口県生まれ。駒沢大学文学部卒。編集プロダクション勤務を経て、執筆活動に入る。95年、明治初期の名優沢村田之助を素材にした時代推理「狂乱廿四孝」で第6回鮎川哲也賞受賞。99年、「花の下にて春死なむ」で第52回日本推理作家協会賞を受賞
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感想・レビュー
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あつひめ
61
骨董の世界は、まるで人の過去までも暴くような・・・見られたくない思いと見てほしい思いがない交ぜになって品物の色つやに沁みこんでいるものを表に引っ張り出すような世界のような気がした。そこまで露骨じゃないにしても、長い間そのものに宿っていた思いを引き出す貴重な仕事をする人たちの世界でもあるのかもしれない。今までに陶子に関わってきた人の過去に足を踏み入れる瞬間をともに味わったような気もした。タイトル作品の「瑠璃の契り」が印象的。硝子さんの硝子は本名なのかなぁなんてちょっと先を読み過ぎたかしら。2012/12/29
れみ
37
店舗を持たない骨董商・旗師〝冬狐堂〟こと宇佐美陶子が主人公の連作短編。このシリーズを読むと、美術や骨董の世界って深入りすると恐ろしいといつも思ってしまう。テレビのお宝鑑定番組をヘェ〜と言いながら見たり美術館や博物館でガラスケースの向こうにあるものを眺めてるくらいがちょうどいい(^^;そして最後の「黒髪のクピド」に出てくる「あの人形が、なぜ作られねばならなかったのか」というところが、いかにも北森鴻さんだなあという感じ。2014/07/16
きつねこ
34
読み進むにつれ、陶子さんの魅力が増してきます。北森さんがご存命だったら、硝子さんとの友情、プロフェッサーDとの関係など、もっと広がっていたのでしょうね。このシリーズは香菜里屋、那智先生のシリーズとともに何度も読み返しそうです。2014/11/15
まさ
25
北森さんの冬狐堂シリーズ4作目。このシリーズもここで完結ですね。陶子のこれまでの人生が軸になって展開していくのでこれまで読んだ作品への味わいも深まるような感じがした。陶子の思いが詰まった1冊だなぁ。2024/10/20
ぶんぶん
21
【図書館】旗師・冬狐堂シリーズ、第4弾! しかし、私は三冊目、シリーズ初めの「狐罠」「狐闇」を読んでいない。 遡って読んでみよう。 さて、宇佐美陶子シリーズの最終巻になってしまった作品だが、「黒髪のクピド」に陶子の悲しみが詰まっている様な感じがして、心に残る。 骨董を通じて人の哀れさを想う、良い作品ばかりでした。 オカルトとミステリーを併せ持つ、北森鴻の感性が素敵です。 残された作品で故人を偲びます。2024/11/30