内容説明
それから日和子は笑いだしてしまう。くすくすと、そしてからからと。笑うことと泣くことは似ている。結婚して十年、幸福と呼びたいくらいな愉快さとうすら寒いかなしみ、安心でさびしく、所在なく…。日々たゆたう心の動きをとらえた怖いくらいに美しい、連作短篇小説集。
著者等紹介
江国香織[エクニカオリ]
1964年東京生まれ。1987年「草之丞の話」で「小さな童話」大賞受賞。「409ラドクリフ」(フェミナ賞)、「こうばしい日々」(坪田譲治文学賞)、「きらきらひかる」(紫式部文学賞)、「ぼくの小鳥ちゃん」(路傍の石文学賞)等をへて、2002年「泳ぐのに、安全でも適切でもありません」で山本周五郎賞、2004年「号泣する準備はできていた」で直木賞を受賞
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感想・レビュー
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yutan2278
23
連作短編集。 塾の模試に出ていて、「意味がわからん!」と子どもが言っていた「箱」を読もうと思い、図書館で借りてきました。模試で何故この話だけを切り取って出題したのかは疑問ですが…。 結局なんだかんだと、一冊読了して思ったのは、ゴミはゴミ箱に入れてくれるし、濡れたまま布団に入らないし、うちの旦那さんがまともで良かった!ということ。まぁ、生返事はたまにあるけども。2023/06/17
傘介
23
江國さんの本はこういったなだらかな、不倫も失踪もDVもない物語をとくに読み返したくなる。トイレに貼られたシール、妙な貯金箱、赤い長靴。象徴的な小道具から導かれる感情のゆれが、ひやりと澄んだ言葉で描かれる。言葉の通じない夫に日和子がくすくす笑うたび、ひやひやする。結婚10年目の妻はたぶん夫を愛しすぎている。だからくすくす笑って、どんどん寂しくなるのだ。お気に入り"妻のつぶやき思考小説"コレクション(『これでよろしくて?』川上弘美、『つまのつもり』野中ともそ、共に結婚8年前後を絶妙に描いている)に早速、追加!2014/07/03
ベリル
22
【Library】何度目かの再読。結婚して10年が経つ、子どものいない夫婦の日常。特別大きな事件が起こるわけでもなく、淡々とした毎日が綴られてる。独身だった頃はこの物語が恐怖だったけど、結婚後に読むと少しずつ主人公に共感してるから怖い。むしろ、つけっぱなしのTVとか、「うん」しか言わずに返事もろくに期待できない空虚な会話とか、そういう瑣末な描写にゾッとした。妻の視点で見る現実と夫の視点で見る現実に齟齬がある、という単純な事実がなぜか刺さる。江國さんの描く夫婦は、本当にリアルすぎて怖いのに目が離せない。2023/05/20
Heart
22
“号泣する準備はできていた”のような、日常を切り取ったような雰囲気で良かった。(*^^*)私はまだ結婚をしていないので、夫婦間の気持ちなどはわからないけれど、何か切なかった。江國さんの作品はタイトルもいつも可愛らしくて、雰囲気に引き込まれますね。(*´ー`*)2016/01/27
megumi♪
18
結婚10年目の夫婦の日常を綴った連作短編集。特別仲が良いわけでも、これといった事件が起きる訳でもなく、淡々とした日々の情景が切り取られています。描写は美しいけれど、他の作品に比べると少しどんよりとした空気が漂っていてそれがそのまま2人の関係性にあてはまってる気がしました。それでも何だかんだ読んでしまう江國作品です。2020/06/06