内容説明
「エロ事師」から四十年、炸裂する妄想の到達点。文壇最後のカリスマが、ここにいる。
著者等紹介
野坂昭如[ノサカアキユキ]
1930年、鎌倉生まれ。旧制新潟高校を経て、早大文学部仏文科に七年間在籍。67年、「火垂るの墓」「アメリカひじき」を発表、のちに直木賞受賞。焼跡闇市派といわれる。同年、歌手としてデビュー。83年、参議院比例代表制選挙、当選。同年、田中金権政治を批判し衆院選立候補、落選。97年、「同心円」吉川英治文学賞受賞。2002年、「文壇」泉鏡花文学賞受賞
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Ayumi Katayama
20
エレクションテスト、死刑長寿、子供は火事の子、なんでもない話、世にも醜いこと、現代語訳ワタクシ神話、の五作品。野坂さんははじめて。途中で千切られたような独特な文章。ともすれば迷子になりそうになる。そして独特な内容。笑いと涙が交互に押し寄せる。野坂昭如の中にそのどちらもが同居している。どちらが顔を出すのか。もしかしたら、野坂昭如自身にもわからなかったのかもしれない。2020/10/11
そうたそ
20
★★☆☆☆ こんなインパクトのあるタイトルの作品を書いている人が、まさか「火垂るの墓」の作者と同一人物だとは誰も思うまい。だがそういうことである。作者の為人を見る限り、こちらの方が作者らしいといっても間違いないとは思うのだが。テンポ良い文章で語られる内容には、何か煙に巻かれているような印象さえ受ける。テーマの破天荒さでは筒井康隆に似たものもあるのだが、こちらの方がより純文寄りという気はする。「エレクション・テスト」はアホらしくて笑ったが、結局どの作品も同じ調子ではあるので飽きがきてしまった。2015/07/14
あられ
8
表紙のイラストが宇野亜喜良氏、死刑長寿という題名にひかれて、はじめて野坂昭如氏の本を読んだ。文章が独特、なにを読んでいるのか、ときおりわからなくなりつつ。「エレクションテスト」老人は死にましょうってか。「死刑長寿」死刑囚が元気な世界長寿だった。「子供は火事の子」そういえば火を使うことがない。「なんでもない話」いや、ありすぎて怖い。「世にも醜いこと」肯けるが実行できない。「現代語訳ワタクシ神話」これがくせ者、ぐるぐるとまわっていて、迷子になりそう。あとがきには「わが嘘に終りはない。」と。嘘でよかったのか。2023/04/08
ギルヲ
5
65歳以上の男性に勃起力の有無で余生を問う『エレクションテスト』死刑執行をたまたま免れている死刑囚が118歳だったという表題作、無感動に殺人を重ねる通り魔の日常生活『なんでもない話』ほか、野坂氏独特の、饒舌でちょっと難しいのに何故かドライブ感のある文章で綴られた全6編。奇想小説集と言っていいと思いますが、巻末に語られているように『14歳で焼け出され・・・嘘と現実の区別が無くなった』著者にとっては紛れもない純文学なのかも。とても面白く読みました。2024/01/05
dra-wrappin
2
なんともインパクトのある表紙と内容…とても『火垂るの墓』の原作者とは思えない。と感じたら、筆者の術中にハマっているんだろうなあ。2017/04/14