内容説明
恋は朔太郎の心も、神父の心も、美少年の心も惑わす。―教会の香部屋に浮かぶあの天使は何を意味するのか。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
そうたそ
27
★★☆☆☆ 萩原朔太郎が主人公として登場する幻想小説。作品の随所に萩原朔太郎の作品が引用されており、まさに彼なくしては成立しない作品に仕上がっている。全体的に夢枕さんの流れるような、且つ簡潔で長ったらしくない文章が最大限に活かされた幻想小説に仕上がっているように思う。ファンタジーの色彩が強く、この手の作品が苦手という人もいるかもしれない。個人的にも、なかなかとっつきにくい作品で、最後までこの作品の魅力を感受できなかったのが残念。小説というよりは長い壮大な詩を読んでいる気にさせられる作品であった。2014/08/22
しーふぉ
26
「真っ白い天使がゆっくり腐っていくの」という知人の言葉からインスパイアされた小説というか詩のようなイメージを文章にした作品。最初の言葉からイメージしたのが萩原朔太郎だという。萩原朔太郎はこんなに狂気をもった詩人だと知らなかった。朔太郎の詩をもっと読んでみない。2017/01/24
はかり
17
夢枕獏にこんな本があるとは知らなかった。古本屋で見つけて早速読んでみた。私の好きな室生犀星が出てきてびっくり。萩原朔太郎と室生が交流していたとは知らなかった。それにしても、夢枕にしてはかなり難しい内容の著作だった。2024/06/23
Gin&Tonic
12
「いったい、誰がわたしをここへ埋めたのか。」記憶を失った屍体、天使を幻視する神父、恋に狂う病んだ詩人。大正風の神経症的な幻想、三者の視点からなる独白・手記形式の構成、濃厚な同性愛色。こういう要素、非常に好みなのでのめりこむ様に読みました。三者の視点それぞれに屈折したナルシシズムのようなものを感じます。無垢なればこそ愛おしく、罪なればこそ魅惑的。とてもおもしろかったです。2015/02/15
くらげ@
5
(☆☆☆☆☆)3人の視点、一人は実際にいた人物であったり、地面の下に生まれれている人物の「私は誰に殺されて埋めれたのか?」といったようなそれぞれの語り口がとてもおもしろい。文章も陰陽師のときの雰囲気と同じくどこか淡々とした静寂さもあり、どことなく安心感があった。そして曖昧で漠然としたまま物語が進んでいるにも関わらず物語に引き込まれていく感じが私としてはツボ。ただ天使が大きいのには違和感が・・(笑)。2011/03/05