出版社内容情報
キレる子供、疲れている教師。安らぎを、拠り所をどこに見出せばいいのか。注目の山本周五郎賞作家が鋭く描く現代版"家族の肖像"
内容説明
帰りたい、でもどこへ?僕たちの人生も半ばを過ぎた―。古郷を出て20年あまり。旧友の死が、4人を再会させた。彼らの帰る場所はどこなのか?渾身250枚の書き下ろしを含む力作中篇集。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Shinji Hyodo
87
「ノスタルジー禁止」の言葉が文中に何度か出て来る。ノスタルジー…ってフランス語なのですね〜知らなかった。望郷や郷愁と訳されるようですが、何か楽しかった、幸せだった昔を偲ぶ様な、今が不幸で楽しく無い訳じゃないのに…少し後向きな印象も感じる言葉。ほんとに久しぶりの重松さんの物語。三つの物語で、それぞれに友人の死であったり家族の死が遺された者に深く関わってくる。「カカシの夏休み」「ライオン先生」は共に教師が主人公で生徒や父兄、家族や友人との難しい問題を重松さんらしい優しいエンディングで結んでくれた。2017/03/19
優希
68
死をきっかけに、心の奥底にしまっておきたくて、簡単に言葉にすることもできない感情を抱えた3編からなる短編集です。重くて心がえぐられるようでした。人生は思い通りにはいかなくて、複雑な想いから過去にすがろうとしたり、偽りの自分を演じてみたりするけれど、本当の姿の自分でいられるのが一番いいと思います。事件の当事者ではなく、少しだけ脇にいた人たちの辛さが、時を経てこれからを照らしていくような空気に気持ちが救われました。2015/07/29
文庫フリーク@灯れ松明の火
57
「幸せって、なんだと思う?」「ポン酢しょうゆのある暮らし」懐かしCM登場の表題作・主人公は37歳小学校教諭。奥付見ると平成12年発行、なるほど同年代。地元で暮らしていれば、お互いあだ名で呼びあう小・中学生の頃からの仲間も多い。心ならずも先に逝ってしまったヤツもいる。「ライオン先生」の如く父と娘で暮らすヤツもいる。泣くとか感動より先に身につまされてしまう1冊でした。2011/10/16
ぶんこ
42
思春期の(どうしようもなさ)に向き合う教師という職業の難しさ、大変さがひしひしと伝わってきました。カカシ先生もライオン先生も生徒に向き合っているからこその大変さなのでしょう。職場が心休まらない時が多いだけに、家庭が問題なしなのが救いでした。3作目の「未来」が重かった。言葉が出てきません。2018/06/05
taiko
41
中編3つ。どれも深く考えさせられる話。 表題作、コンタと息子翔太の活躍でカズが元気になり、父親との関係が良くなりそうな終わり方にホッとしました。 「ライオン先生」はちょっと複雑。トイレで落とした時にはどうなることかとドキドキと気を揉みました。 「未来」、姉弟の2人が赤堀くんのお通夜に行くシーンにグッときた。その後の弟の様子に、いい子だなとひと安心。 少し昔の話だが、あまり古さを感じなかったですが、携帯やスマホがないことだけは、あったら違ったかもを考えさせられました。2018/07/04