出版社内容情報
やはりひとりで行くしかないのかね/ベッドはさみしく冷たいがね……。友の詩を呟きながら男は車窓の影を追った。表題作など四篇
内容説明
男はみな遡るべき川を胸に持っている。無賃乗車の少女と初老の男が辿る不思議な道行き著者の新境地を拓く最新作品集。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
愛敬 史
1
4篇の作品が収録されており、いずれも「過去」と向き合う人たちが出ている。表題作にもなった『鮭を見に』は初老の男が無賃乗車の女の子と、過去に捨てた女の故郷に向かう話。出てくる人があまりに善意的で、小説としての甘さもあるが、人の優しさに触れることが出来る。『海向こうの故郷』は作者の幼少期、一関の亜炭鉱山に疎開した時を題材にしている。朝鮮人の安さん、マタギ出身の佐忠さんの不器用で、しかし優しい人柄が伺える。内海文学は人が持つ暖かさが魅力だが、この作品もまた過去と向き合う人の情緒がしみじみと伝わってくる。2023/02/07
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- 獺祭書屋俳話・芭蕉雑談 岩波文庫