出版社内容情報
こんな小説があったろうか? 千日の日記、千の視点、そしてそれを可能にした文体。小説の可能性を実感させる筆者畢生の力作長篇
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
アナクマ
20
リゾート開発に揺れる町。1000日間の出来事を1000ページ、1000の主語/視点で描くアイデアと執念の創作。「私は知恵の輪だ」「私は廃屋だ」没頭だ…浮世だ…よもやま話だ…羨望だ…氷柱だ…。わずかずつ進展するイベント、それぞれにうごめく町びとたちを、著者のフィルターを通して眺めるステンドグラスな構図。◉小説の作りに驚き興味ひかれ語彙の豊かさも味わえますが、肝心の〈著者フィルター〉はどうか。ときに生命の真実を抉ぐるようであり、ときに中二的な皮相も感じられ。結局、主語は千あるのか、ひとつなのか。92年刊。→2024/02/29