出版社内容情報
元老西園寺、天才モーツァルト、希代の謀略家スパイM、若き考古学者など強烈な個性の様々な晩景をえがいて人間存在の根源に迫る
内容説明
円熟の筆致で七色の人生を自在につむぐ珠玉の連作。元老西園寺公望、天才モーツァルト、希代の謀略家スパイM、初一念の先史考古学者、没我の女流画家など強烈な個性のさまざまな晩景を見事にとらえて、荒野を一人歩むがごとき人間存在の孤愁を鮮烈に描く。筆触冴える最新作。
目次
老公
モーツァルトの伯楽
死者の網膜犯人像
ネッカー川の影
「隠り人」日記抄
呪術の渦巻文様
夜が怕い
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
moonanddai
5
歴史に絡む人(西園寺、モーツァルトなど)を直接ではなく、その外縁を描くことによって、その人が浮かび上がってくる…ような。そして(ちょっと言葉を選ばずに言ってしまいますが、)「やはり、女性は怖い。」考えてみれば世の中男か女。それぞれがそれぞれの立場で生きているのですね。それにしても、「M]の晩年は北海道の江別で暮らしたという。場所は明示してはいないけど、読めばこちらの人間にはすぐ分かる。「昭和史発掘」にそこまで書いてあっただろうか?読んだのはもうずいぶん前なので、そのうち確認してみます。2016/05/16
キムチ
2
人生の暮れなずむ頃、枯淡の境と思いきや、どうしてなかなか。西園寺卿、モーツァルトほか市井の人でも地位の高い男性が「草の径・・いわば人生の本道から外れた草叢に歩み入って、生臭く修羅の径に足を踏み入れて・・」といった経緯を描く。こうしてみると、その一因の殆どは女性が絡む、好むと好まざると。とすれば、人生は男女の陥穽の総体性か・・。しかし、どっと疲れ果てた読後。2012/07/17