出版社内容情報
深沈とした光を宿す三つの宝石に托して綴られる三つの物語。人生の悲愁と、数々の血の記憶と、老いゆく男の究極の性と。不朽の絶筆
内容説明
海の色と、血の色と、月明の色と。3つの宝石に托された3つの物語。同時代を疾駆した作家が、生涯の最後に静謐な受容に到る、悲痛なまでの内なる彷徨。絶筆。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
これでいいのだ@ヘタレ女王
3
和製ヘミングウェイ、ベトナム戦争など、戦時下特派員記者として戦場で命がけで活躍し、その後は世界各国を飛び回り釣りや食について誰もが羨む旅をして小説やエッセイを書いていた彼の遺稿。 三つのストーリーから構成されているが、一話目にはまだ輝きが見受けられるが、二話目は病の影響もあってか弱音を吐露。{本文には書かれていないが持病のうつ病と癌〕三話目はエロティックな話を書いているが、これは彼らしくなく無理があったかも。 今回、23年前の単行本を読んだのだが、布張りの上品な装丁とブックケースが素晴らしい 2013/07/31
呑司 ゛クリケット“苅岡
2
著者ファンだと思っているが、私の知る著者は釣りと酒を愛するアウトドア派の作家だ。オーパ!に見る世界の景色は彼の筆致と共に記憶には残っている。この作品が遺作と知ったのは最近のでことだが、船乗り、老子、中華料理店、木片のお守り、月光、古本屋と縦横無尽に展開される著者の興味は尽きない。惜しい作家を失ったことをあらためて感じた。2023/11/27
nana
2
晩年の開高健はスランプに悩んだらしい。平素飄々として人を喰ったような言動をしそうな井伏鱒二(いかにも偏見に満ちた作家像である……すみません)が、NHKのTV番組で、書けないんです、と訴える開高健に対して「いろはにほへと」でもなんでもいいから書けばいいんだ、とか良心をなくしたらいい、とか真摯に答えるさまはなぜかおかしく、また妙に哀しく感じたのを思い出す。で、遺作の『珠玉』である。やっぱりこの人真面目すぎて手抜きできないからスランプに陥るんじゃないかな、という感想を抱いた。2013/06/14
ももんが
1
図書館本。南木佳士さんの「阿弥陀堂だより」で開高健さんの絶筆と知り手に取りました。宝石3種をモチーフにした随筆ですが、私は「掌のなかの海」が一番好きです。焦燥の青い火。アクアマリンが夜の光で見せる煌めきと「さびしいですが。私は」と哭く先生の描写に胸が締め付けられるように感じました。2022/01/01
となりびと
1
帯には“絶筆”の二文字。著者最後となったであろう作品は自伝で、それまで筆を執る為の行動(モチーフや資料探し)が描かれてもいて、それもなかなか作品として結実しない虚しさが文章から漂っているように感じた。2016/05/14