出版社内容情報
カポーティ最後の佳品。父とすごした幼い日のかけがえのない夜が繊細な銅版画の中に甦る、洒落てせつないクリスマス・プレゼント
内容説明
父さんと過ごした最初で最後のクリスマス。『あるクリスマス』の前年、トルーマン・カーポティは父を失っている。触れあうことの少ない父子だった。カポーティ自身、すでに酒とクスリに蝕まれていた。この作品の翌々年、彼はこの世を去る。最後にみる夢、だったのかもしれない。
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pure-oneの本棚
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
おしゃべりメガネ
194
多くの方が幼い頃に誰もが経験(体験)するコトになろうであろう「サンタクロース」の正体とは?幼い頃に両親が離婚して、今は父親と離ればなれの生活をしている主人公「バディ」はあるクリスマスを父親と過ごすコトに。普段から一緒に暮らしていない父親とのクリスマスはどこかギクシャクしていて、イマイチ盛り上がりません。そんな中でもココロ優しき「バディ」の気づかいに胸がホッとします。日常が当たり前に過ぎていきますが、その'当たり前'に慣れてしまってはいけないですね。日々の生活やこれからの未来に改めて感謝しなくては、ですね。2018/12/24
しいたけ
113
物事には必ず、人から窺い知れない裏がある。少年の抱えた孤独と痛み。しっくり胸にはまらない両親のありよう。子どもがじぶんを愛してるとの実感を求める、醜悪な親。その哀しみをすくいとれてしまう繊細さが、カポーティを苦しめた。「いい子にしていました」「サンタクロースがきました」というクリスマスを過ごさずにいる子どもがごまんといる。どこかで膝を抱える子どもに届けて欲しい、癒しという名のプレゼント。メリークリスマス。2019/12/24
buchipanda3
105
離れて暮らす父親と幼い息子が初めて一緒に過ごしたあるクリスマスの日。本来なら楽しいはずのその日。でも愛情の微妙なすれ違いにより、切なくて遣り切れない情感がもたらされ、とても印象深い物語となった。唐突に父親のいるニューオリンズへ呼ばれて、慣れない街と人に怖さを感じながらもいい子に振る舞う少年。その姿からは愛情と不満が入り混じった複雑な心情が見え隠れする。そんな彼がクリスマスの日にあることを知り、その際に父親に向けて言ったセリフにハッとなった。無邪気とも大人な一面を見せたとも言える。そして最後は沁みた。2020/12/15
ムッネニーク
84
63冊目『あるクリスマス』(トルーマン・カポーティ 著、村上春樹 訳、山本容子 銅版画、1989年12月、文藝春秋) 1982年に発表された、カポーティ最後の作品である自伝的小説。1956年に発表した『クリスマスの思い出』同様、カポーティの分身であるバディーが少年時代に経験したクリスマスでの出来事を語る。 〈とうさんげんきですか、ぼくはげんきです、ぼくはいっしょうけんめいペダルこぐれんしゅうしてるので、そのうちにそらをとべるとおもう、だからよくそらをみていてね、あいしています、バディー〉2024/05/07
chantal(シャンタール)
83
村上さんの翻訳に関する本を読んでいたら、たまたま図書館でこの本を見つけて思わずお持ち帰り❤️カポーティの「クリスマスの思い出」と言う短編が大好きなんだけど、その前日譚のようなお話。アメリカにもサンタさんを信じる信じないの論争があるようで、どこの国も子供が考える事は一緒なのかな?山本容子さんの銅版画の挿絵がとても物語にマッチしていて、なんだか「アメリカ」をものすごく感じられる。ああ、バディは早くスックに会いたいだろうなあ。そして「クリスマスの思い出」に繋がるのだなあ。また読みたいなあ。2022/10/21
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