出版社内容情報
海に臨む刑務所の看守の生活を描き、人の生命の重さを問う芥川賞受賞作「夏の流れ」、抒情味豊かな「雪間」「その日は船で…」等を収録
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
八丁堀
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「雪間」芥川賞受賞第一作。亡くなった祖母の通夜に母と共に訪れる忠夫。夜、唸り声で眼がさめたら「死んだら終わりだ」としか語らなかった祖父の広い肩が小刻みに揺れているのを知る。ただただ会話だけで話が進むだけなのに、そして大変抑えた綴りが、祖父の心の内を、やり場のない辛さを、ものの見事に語る。居た堪れぬ呟き「あんまり生きてると疲れるからな」。2012/03/17
ジャ読メヴュ
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表題作「夏の流れ」は1966年芥川賞作品、男子最年少23歳の受賞。刑務官のよく似た内容の映画、休暇(原作は吉村昭の「蛍」1974年)を観ているのでこれとかぶってしょうがなかった。 というかなによりも本の冒頭、筆者のぽっちゃり若造写真にびっくり。えーこれがマルケン??? ほか「雪間」「その日は船で」の計3篇、いずれも教訓も癒し訓もなく淡々としている。2012/01/28
はちみつ
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【夏の流れ】仕事に慣れることについて考えさせられましたが、割り切って考えること、だからと言って辛くないわけでも、やりたいわけでもないということも。【雪間】人は言葉にしないからと言って悲しんでいないわけではない、饒舌に語るよりもむしろ黙っている悲しみの方が深い。夏の流れ同様に語らないけれど人なら感じること。【その日は船で】これもその日夫婦間で無駄に語り合うことはない。共通して、喜ばしいとは言えない或る一日、乃至は二日のことが淡々と描かれていますが、いい後味ではないかな。日々を重ねるということ感じています。2018/05/16