出版社内容情報
著者は今年満90歳の、日本における英文学研究の泰斗です。約40年にわたり東北大学や宮城学院女子大学で研究と教育に携わり、日本英文学会監事や東北英文学会会長も務めました。多くの優れた英文学研究者が、著者の指導を受け世に送り出されました。研究のフィールドは一貫して十八世紀英文学で、本書は、そうした著者の主要研究論文を網羅した、いわば生涯をかけた研究の集大成です。実は本書は、本年6月、私家版として小社から刊行され、限られた読者にのみ配布されたのですが、英文学研究者の間で購入希望が相次ぎ、それに応えるために、装いも新たに「新版」として市販されることになりました。教え子の一人のある大学名誉教授は、教え子という立場を離れても、近年あまた刊行された英文学研究書で五指に入る本、と絶賛しています。タイトルにある「啓蒙」という言葉について著者は「はしがき」で「新しい知識を与え、人の無知を開くという意味であるが、思想史的には西欧諸国で十七世紀末から十八世紀初頭にかけて起こった、中世以来の旧弊や因襲を打破し革新的理性を尊重する運動を表わす」と解説しています。つまり、本書において「啓蒙」という語は、十八世紀の思想や文学を示す言葉として用いられています。本書は大きく3部に分かれており、第1部は「十八世紀英文学」。十八世紀に活躍した英国の文学者や思想家を取り上げ、英国の十八世紀がどのような時代であったのかを明らかにします。第2部は「漱石研究」。言うまでもなく夏目漱石は、小説家となる前は、日本人初の英文学講座担当の帝大教授になっていたかもしれない優れた英文学者でした。英国に留学した漱石は、さまざまな英文学論を残しており、著者はそこから漱石が見た英国を論じます。第3部は「土居先生追想」。著者の恩師である土居光知先生への心のこもったオマージュです。英文学研究の深さ・面白さが味わえる、きわめて良質な研究書をどうかご堪能ください。
内容説明
啓蒙の時代、十八世紀英文学の豊かな杜を逍遙し、漱石と出逢う。ポープ、ジョンソン、スウィフト、スターンなど十八世紀英文学の精緻な読みのその先に、英文学者夏目漱石の依って立つ基盤が見えてくる。英文学研究の泰斗による「人生最終本」。
目次
第1部 十八世紀英文学(バートンと日本;ウィリアム・テンプルの中国観;ハリファックスの中道主義 ほか)
第2部 漱石研究(漱石のポープ論;漱石のポープ像;漱石とスウィフト―開化の中の厭世主義者 ほか)
第3部 土居先生追想(土居光知先生の事ども)
著者等紹介
鈴木善三[スズキゼンゾウ]
1931(昭和6)年10月16日宮城県宮城郡塩竃町(現塩竃市)に生まれる。1962(昭和37)年3月東北大学大学院文学研究科博士課程満期退学(英文学専攻)。1963(昭和38)年4月東北大学文学部専任講師。1966(昭和41)年4月東北大学文学部助教授。この年、平善介氏、樋渡雅弘氏と共に日本ジョンソン協会を創設。1981(昭和56)年1月東北大学文学部教授(英文学講座担任)。在任中、東北大学の評議員を二期(一期二年)務める。1995(平成7)年3月東北大学を停年退官、名誉教授となる。1995(平成7)年4月宮城学院女子大学大学院人文科学研究科教授。1999(平成11)年4月宮城学院女子大学大学院人文科学研究科科長(2001年3月まで)。2002(平成14)年3月宮城学院女子大学退職。この他、日本英文学会監事や東北英文学会会長も務めた。海外での活動としては、1969‐70年に渡米し、PopeやSwiftなどの研究誌The Scriblerianの編集に携わったほか、英国ケンブリッジには、British Council Visiting FellowとしてHughes Hallに2年ほど滞在したのをはじめ、長期・短期を合わせ6回渡英した(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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