叙勲 - 長き戦後の終わり

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  • サイズ B6判/ページ数 172p/高さ 20cm
  • 商品コード 9784160088474
  • NDC分類 913.6
  • Cコード C0093

出版社内容情報

脳梗塞の妻の言葉に励まされ、自身の戦争責任や自閉症の孫の家庭に起きた不幸から、辞退した叙勲を受けるに至る変化を描く中篇小説

「おとうさん、絶対辞退は撤回して!」
――脳梗塞の妻の言葉に励まされ、自身の戦争責任や自閉症の孫の家庭に起きた不幸から、辞退した叙勲を受けるに至る変化を描く中篇小説

私は妻へのお返しに、いったいなにができたのであろう。いくら考えても、お粗末ながらこの五年間の介護しかない。……私は今まで、市や県を含め、公共機関から多くの栄誉をいただいた。しかし今まで、栄誉の陰で働いた妻には、私のぎこちないねぎらい以外、なにもなかった。……夫婦同等に受けたこの叙勲をもって、私たちの総括としたい。(「受章後と妻の最期」)

今、眼前に泰然とそびえる宮城を見て思う。図らずもお招きをいただいたが、過去の問題に思いを馳せる。
そうだ! そうだったのだ!
この大地、この空気、この静寂。
私たちの世代はこれを守るために戦ったのだ。(「叙勲の連絡」)