出版社内容情報
清潔な都市環境、健康と生産性の徹底した管理など、人間の「自己家畜化」を促す文化的な圧力がかつてなく強まる現代。だがそれは疎外をも生み出し、そのひずみはすでに「発達障害」や「社交不安症」といった形で表れている。この先に待つのはいかなる未来か?
内容説明
自己家畜化とは、イヌやネコのように、人間が生み出した環境のなかで先祖より穏やかに・群れやすく進化していく現象だ。進化生物学の近年の成果によれば人間自身にも自己家畜化が起き、今日の繁栄の生物学的な基盤となっている。だが清潔な都市環境、アンガーマネジメント、健康や生産性の徹底した管理など「家畜人たれ」という文化的な圧力がいよいよ強まる現代社会に、誰もが適応できるわけではない。ひずみは精神疾患の増大として現れており、やがて―。精神科医が見抜いた、新しい人間疎外。
目次
序章 動物としての人間
第1章 自己家畜化とは何か―進化生物学の最前線
第2章 私たちはいつまで野蛮で、いつから文明的なのか―自己家畜化の歴史
第3章 内面化される家畜精神―人生はコスパか?
第4章 「家畜」になれない者たち
第5章 これからの生、これからの家畜人
著者等紹介
熊代亨[クマシロトオル]
1975年生まれ。精神科医。信州大学医学部卒業。ブログ「シロクマの屑籠」にて現代人の社会適応やサブカルチャーについて発信し続けている(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
こも 旧柏バカ一代
51
昔の人は野蛮だった。口論の最中に殴るし、刃傷沙汰にする。男社会ではセクハラも当たり前だった。子供も大切にしないで大人と同じ扱いをしていたらしい。それに反感を持つ自身は家畜化しているんだなと本書を読みながら実感。社会に無意識に適合していたんだな。でも、野蛮になったら良いと言うわけではない。その反動がアレだったりするんだろう。意識してようが、していなかろうが世の中は確実に変わって来ている。今は、良くなってる気がしない。2024/05/19
クリママ
45
「家畜人ヤプー」を思い出してしまったが、もちろん違う。自己家畜化とは、人が生み出した環境の中で、穏やかで社会ルールを守れる人に進化していく現象。著者は精神科医だが、その進化を科学的に歴史的に解説し、現代の生きにくさを感じる人を分析する。数百年前の人は今の社会では受け入れられない。医学が急速に発達した19世紀ころから社会の在り方も急速に変わり、その管理下に入れない人もやはり問題があるといわれる。近年精神疾患が増加しているように思っていたが、そのことについても書かれている。予想される未来、社会制度によって⇒2024/09/04
ta_chanko
40
人間が犬・猫・牛・羊・豚などを家畜化し、従順な個体を選別してきたのと同様に、人間も自己家畜化により従順で攻撃性の低い個体が選ばれ、子孫を残すことでその割合を増やしてきている。ここ半世紀だけを見ても社会は大きく変わり、飲酒運転・喫煙・自転車泥棒・立小便・体罰・各種ハラスメントの類は激減。人間の場合、生物的進化よりも文化的進化の方が速度が圧倒的に速いため、それに上手く対応できない人々を多数生み出している。うつ病・発達障害・精神障害などの増加がその現れ。現代はそういった人々を犯罪や治療の対象として排除している。2024/06/17
haruka
35
漂白して、きれいにしよう、安全で清潔な社会がいいよね~とがんばっていたら、なぜか息苦しい社会ができあがってしまった21世紀。すこしでも暮らしやすい明日のために、わたしたちは社会や他人を善意で「漂白」してきたけれど、本当は自分の内にある自然をも漂白していたのだ。あふれていたホームレス、落ち着きのない子供、インターネットについていけない大人は、どこに隠されたのか・・?時代についていけないイコール「障害」なのか?どんどん高度になっていく社会の中で、置き去りにされたそれは、心の病の爆増という形で表れてくる。2024/07/02
空猫
34
「家畜化」とは人に飼われることで生き延びてきた動物ー犬、猫、牛、羊…を示す。それが急激な近代化により人間も地域社会、ルールやモラルに縛られ、人間の生物としての姿を忘れつつあるのではないか、の考察。優生思想が行き過ぎ 「普通の暮らし」からはみ出す人々を切り捨て、『すばらしい新世界』の様な世界になるのではないか?第5章の「未来の景色を想像してみる」が少しずつ現実化して…?? 弱者を「自己責任」と切り捨てるのではなく助け合う社会になることを願う。2024/07/01
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