内容説明
分離戦争まっただなかのインド。サンジーヴの村にも戦火がおよぶ。アニメさながらの巨大ロボットの戦いに、子供も大人も大喝采。ロボット戦士にあこがれて、サンジーヴは都会へと向かうが…「サンジーヴとロボット戦士」、ダンサーのエシャは、レベル二・九という高い知性を持つAIの外交官A・J・ラオに求婚される。怖ろしいまでに魅力的な彼に、エシャはすっかり夢中になるが…。AIと人間との結婚が産みだす悲喜劇を描き、ヒューゴー賞、英国SF協会賞を受賞した「ジンの花嫁」など、猥雑で生命力あふれる近未来のインドを描く連作中短篇7篇を収録。
著者等紹介
マクドナルド,イアン[マクドナルド,イアン][McDonald,Ian]
1960年、英国マンチェスターの生まれ。5歳の時、北アイルランドに移住。大学では心理学を専攻するが中退。1988年に発表した第一長篇『火星夜想曲』でローカス賞を受賞。1991年発表の『黎明の王 白昼の女王』でディック賞を受賞。2004年刊行のRiver of Godsは、英国SF協会賞を受賞している
下楠昌哉[シモクスマサヤ]
1968年生、文学博士、上智大学大学院博士後期課程修了。同志社大学文学部教授
中村仁美[ナカムラヒトミ]
東京大学文学部卒。英米文学翻訳家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
藤月はな(灯れ松明の火)
41
昨今、IT化が発展しているインドを舞台にしたSFに出会ったのは『ねじまき少女』とこの本でした。「カイル、川に行く」はカースト制へ「特権階級とITに関係する西洋人のみが享受できるハイテク社会の箱庭」という要素をプラスすることで決して混ざり合うこともない断絶を際立たせ、苦い余韻を残します。また、「小さな女神」で初潮を迎える=女の体になると神聖を失うとされる少女神が少女になるきっかけにコム(通信機)=「俗世のもの」に触れたからというのはシビアすぎます。しかし、それでも生きようとする逞しさは眩しかったです。2015/03/15
キキハル
30
八つに分裂した近未来のインドを描いた連作短編集。古いしきたりに捉われながらも、新しいナノテクノロジーの発展とともに変わりつつある国々。特に若い世代に焦点を当て、彼らと国の、成長と変化をつぶさに見せてくれる。例えば、一定期間、女神になることを強制された少女。レベル2.9の最高のAIである魔神と結婚したダンサー。そして遺伝子を改変させられた特別な子どもであるブラーミンの彼。数奇な運命を生きた証は絶望だけではない光がある。この本以降のインドの行く末が非常に気になる。インド国外の作家にしか描き得ない異文化SF。2012/07/09
ニミッツクラス
25
12年(平成24年)の税抜1700円のバチガルピに続く新銀背の3冊目。ワトスンではない方のイアンによる7編のほぼ連作の中短編集。「ジンの花嫁」は07年度のH賞ノヴェレットを、底本自体では10年のディック特別賞(次点)を受賞。もうじき初期設定(2023年~)に現実が追いつくが、さすがのIT立国インドでもここまでは…小型のハイテク機器の電源はどうなってるの? 分裂インドやネパールの高貴から賤民の人々の生活がSF叙事的な流れの中でも総天然色ながら熱く暑く埃っぽく独立前と変わらないのが亜大陸の弾力だ。★★★★☆☆2021/07/12
maja
24
イギリス人作家の描くインド近未来が舞台の連作中短編集。モンスーンが来なくなった電脳世界のこの地では、分離した国家で水戦争が勃発している。要所要所のインドのあれこれ、神話、風俗、土地、シャターブディー-急行までも。インドのイメージが膨らんで丸扇子のように広がって連なって海波模様を描いていくような印象だ。その波間から浮きあがってくるのは「カイル、川にいく」「暗殺者」ネパールのクマリ「小さき女神」。 2021/07/23
宇宙猫
19
★★★ 挫折。近未来のインドを描いた作品で、まあまあ面白かったんだけど、下楠さんの訳の話が読めなかった。(この本は下楠昌哉さんと中村仁美さん2人の訳)それが訳のせいか内容のせいかは分からない。2015/10/04