出版社内容情報
気候変動と戦争に荒れた未来。富裕層は精神を仮想空間に移し永遠の命を得たが、全財産を次世代に託し死を選ぶ者もいた。彼らを看取る楽園〈ヘヴンズガーデン〉で元難民のコーディネーター・エルムは何を想うのか。人類の過ちと環境破壊の果てを静謐に描く物語
【目次】
内容説明
気候変動と戦争に荒れた未来。生を脅かされる難民が地表に溢れる一方、富裕層は精神を仮想空間に移し永遠の生を得ていた。しかし、次世代のために全財産を寄付し死を選ぶ者もいる。〈ヘヴンズガーデン〉は、彼らに理想的な最期の時間を提供し、その遺産を難民保護に充てる施設だ。コーディネーターとして寄付者の〈旅立ち〉に寄り添う元難民のエルムは、地球を壊してしまった過去を引き受けようとする寄付者のローズやリゲル、ガーデンを訪れた元難民のリンクス、施設の創設者「三毛猫」との日々を通じ、自らの過去、そして生きる意味に向き合うこととなる。人類の残した傷跡を見つめ、失われゆく世界に寄り添う静謐なSF譚。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
rosetta
31
★★★☆☆13回ハヤカワSFコンテスト優秀賞。とても美しい文章をゆっくり読むための小説。世界の環境が悪化してタワーや極地に住む富裕層と貧民に極端に二分割された時代(最近こんなのばっか)。富裕層に満足いく死を与え遺産をもらい難民を救うヘブンズガーデン。それまで小汚く金を溜め込んできた富裕層が人生の最期にそんな気持ちになるもんか?ラスト辺りで三毛猫やリンクスや主人公が何頁にも及んで長々と告白するのが読んでて辛いし鬱陶しい。『アルジャーノン』みたいに、これが短編だったら10倍くらい面白かっただろう。2026/05/11
よっち
30
気候変動と戦争に荒れ壊れゆく星。富裕層は仮想空間に移住し永遠の生を得る世界で、絶望の先に生まれた庭で受け渡されてゆく命を描いたSF小説。次世代のために全財産を寄付し死を選ぶ者たちに最期の時間を提供し、遺産を難民保護に充てる施設で、コーディネーターとして旅立ちに寄り添う元難民のエルムが、地球を壊した過去を持つ寄付者やガーデンを訪れた元難民、施設の創設者との日々やそれらの背景をリアルに描く中で、、自らの過去や生きる意味に向き合い、その答えを提示しないことで死生観を一人ひとりに問いかけてゆく印象的な物語でした。2026/02/25
信兵衛
20
設定や雰囲気に好感を覚える作品なのですが、最後、主人公は何かを選び、あるいは何かを決意し、そこに救いを見出したのかどうか。その点があやふやであり、釈然としない思いが残ります。2026/02/14
ベル@bell-zou
18
とても大きくて深い透きとおったガラスの器に、色を失った悲しみや辛さが少しずつ少しずつ注がれていく。エルムの、三毛猫の、アッシュの、ローズの。そんな世界。心塞ぐ物語の中で確かな生活の温かみをもたらしたリンクスの声に、一瞬だけ安らぐ思いがした。自然破壊と戦争、贖罪、格差社会、尊厳死…。あらゆる難しいテーマを盛り込み当然ながら答えはなく主人公エルムの選択もわからず言葉数をかけた割には中途半端な印象だけれどそこそこドラマティックではあったので読み通せた気がする。【第十三回ハヤカワSFコンテスト特別賞受賞】2026/04/10
おだまん
16
第13回早川SFコンテスト、大賞なしの特別賞受賞作。小川一水さん激推しとのことで期待。自死を選ぶという物語ながらヒーリング系で優しい雰囲気に包まれて。肉体と精神、「生きる」ことと「死ぬ」ことの意味、思いが読者に委ねられた小説。2026/02/20




