タイム・シェルター

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タイム・シェルター

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  • サイズ 46判/ページ数 512p/高さ 20cm
  • 商品コード 9784152104717
  • NDC分類 989.13
  • Cコード C0097

出版社内容情報

幸福だった時代を再現しアルツハイマーを治療するクリニック。患者は懐かしい記憶を追体験することで症状の改善を目指す。だが再現度が高まるほど、現実逃避を望む者が集い、やがて世界中で模倣される。過去は楽園か、それとも監獄か――ブッカー国際賞受賞作


【目次】

内容説明

謎めいた散策者、ガウスティンが開設した「過去のためのクリニック」。そこでは認知症患者のため、各階に異なる年代を細部まで再現し、患者を自らの記憶へと”送り返す”。助手である語り手は、1960年代の家具や1940年代のシャツのボタン、匂い、さらには午後の光に至るまで、失われた時代の断片を集め続けることに。だが再現された”過去の部屋”があまりに精巧になると、健康な人々までもが現在の恐怖から逃れるため、郷愁にのみこまれていく。やがて過去は避難所ではなく、現在を侵食する存在となっていき―。25の言語に訳され、ブッカー国際賞を受賞!ブルガリアを代表する作家ゴスポディノフの、最高到達点。ストレーガ・ヨーロッパ賞受賞。

著者等紹介

寺島憲治[テラジマケンジ]
早稲田大学文学部大学院博士課程修了、ブルガリア・ソフィア大学留学。元東京外国語大学講師

ゴスポディノフ,ゲオルギ[ゴスポディノフ,ゲオルギ] [Gospodinov,Georgi]
1968年、ブルガリアのヤンボル生まれの作家、詩人。共産主義体制崩壊後のブルガリアから登場した作家のなかで、最も多くの言語で翻訳され、国際的な賞を受けてきた作家である。『タイム・シェルター』は、長篇第三作目。本作のイタリア語版は、権威あるストレーガ・ヨーロッパ賞を受賞。そして英訳版で、ブルガリア人として初のブッカー国際賞を受賞した。ニューヨーカー誌、ガーディアン紙、フィナンシャル・タイムズ紙ほか数多くの媒体でブック・オブ・ザ・イヤーに選出されるなど世界的な注目を浴びた。小説のほかにも、詩、エッセイ、脚本、グラフィック・ノベルなど幅広い分野で作品を発表し、現代ヨーロッパ文学を代表するひとりとして評価されている(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。

パトラッシュ

130
現在が不幸だと感じる人間が、幸福な過去を懐かしむのは当然だ。細部まで過去を再現した部屋に認知症患者を住まわせて、症状の改善を図る治療法が出現してもおかしくない。しかし過去への回帰が精神治療だけでなく国民世論となり、政治目標と化す時代が来るのか。昔に比べ向上した体制や生活水準が、元の不便さ貧しさに戻るのを望むだろうか。あり得ないと思う人には出来の悪いSF視されそうだが、AIがヒトの頭脳を凌ぐシンギュラリティを迎え社会運営まで関わるようになれば可能性はゼロではない。数十年先に本書が予言とされる日が来るのかも。2026/05/25

もえ

38
2023年ブッカー国際賞受賞作品。アルツハイマーを治療するクリニックが、幸福だった時代を再現して症状の改善を目指そうとするのだが…。冒頭から散文詩的で難解なのだが、読み進めるうちにこの不安定で幻想的な文体が癖になっていく。ボルヘスの二重化のような鏡の中に鏡がある感じ。欧州の戦前戦後の歴史が下敷きになっていて、1939年と1968年と1989年が肝か。どの時代を幸福な理想の過去と見るかの見解が各国で違っていて、第4章の「過去選択の国民投票」が興味深い。知識の宝庫の図書館もある意味タイム・シェルターなのか。2026/05/12

ほんメモ(S.U.)

16
アルツハイマー型認知症の治療のために、過去を忠実に再現した部屋を備える「過去のためのクリニック」。それがやがて現在と未来を恐れる人々に広がって、ヨーロッパ各国で、どの年代に留まりたいかの国民投票が行われ---そんな不思議なお話でした。ブルガリアの作家さんの小説は初読み、歴史を確認しながら読みましたが、89年の民主化の影響が、人々の青春時代に光も影も与えているように感じました。後半は散文形式なので少し戸惑いましたが、作者の自由な発想力の表れかな。「記憶が乏しくなればなるほど、過去はますます大きくなってくる」2026/06/02

練りようかん

14
ブルガリア人作家のブッカー国際賞受賞作。設定が興味深く、人々が過去へ走る現在に現実の国の在り方が重なり、未来予想図に見える一方でヨーロッパの歴史を総浚いしている感覚もあって、医学的にも勉強になる内容だった。世界では三秒に一人が認知症を発症していて、主人公はある人物とクリニックを開設。その人物の動機が気になり認知症でない人をも取り込む恐慌状態に寒気を感じた。回帰すべき幸福な時代、過去選択の国民投票ではスウェーデンのIKEA対ABBA、自分ならどの年にいたいかが意外にすっと決まったことも面白く感じた。2026/06/13

Acha

9
古い新聞、手紙、記憶、謎めいたクリニック、過去を織りなす部屋…モチーフに気配が満ち満ちる。言葉やフレーズの美しさと世界観にふれるだけでいい。言動が覚束なくなってきた身を過去に委ねて活性化させるという筋書きはキャッチーにも思えたが、次第に思考がぐるぐると迷宮のようにおり重なっていく。ム、ムズい。それでも遂に欧州諸国が国民投票に到るクライマックスなど、所々はユーモラス。そしてクロスを畳むように、物語は駆け足で幕を閉じていき、一人取り残される。読後も、この本のカケラが自分のどこかに残っていたら、嬉しい。2026/06/12

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